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散居とチューリップの里 (砺波市)

郷土の歴史遺産が点在


かやぶきの「かいにょ苑」は、明治期に建てられたこの地方の典型的な農家だ

 砺波平野の中心、砺波市。地図で確かめると、道が放射状に広がっているのがよく分かる。特に高岡と五箇山方面を結ぶ道は、古くから重要な交通路だった。

 JR城端線砺波駅から本町交差点に出る。ここから南へ約800メートル進むと、かやぶきの「かいにょ苑(えん)」が右手に見えてくる。水田に囲まれた家々が点在する散居村地帯の典型的な農家の造りで、現在は文化施設として公開されている。

 ニワと呼ばれる広い土間。黒光りする太い梁(はり)や柱。木のぬくもりに、ほっと心が休まる。囲炉裏端にたたずむと、かつての農村の生活と、懐かしい人々の面影が浮かんでくるようだ。

 本町交差点まで戻り、右に曲がると間もなく、「御旅屋(おたや)の井戸」がある。1664年(寛文4年)、加賀藩主前田綱紀の鷹(たか)狩りの際に宿泊施設の建設とともに掘られた歴史あるもの。「ああ、うまい」。殿さまはそう言いながらのどを潤したことだろう。

 出町神明宮を過ぎてJRの踏切を渡る。国道156号と359号が交わる角にあるのが砺波チューリップ公園。ゴールデンウイークには100万本の花が波打つ公園も、今はまだ静かな眠りの中にあった。

 屋外ステージ周辺に展示されているクラシックな乗り物2台に目を見張る。1台はイギリス製蒸気機関車「中越弁慶号」。1897年(明治30年)、中越鉄道(現在の城端線)開通の際に導入され、日本に現存している機関車のうち4番目に古いもの。もう1台はアメリカ製の消防車、チャンドラー号。1928年(昭和3年)から出町の消防組で活躍し、その最新の設備と美しい姿は称賛の的だったという。

 水辺に設けられた水車苑も壮観だ。1秒間に106リットルもの水をくみ上げるという5連の水車はまるで列車の車輪のようだ。砺波地方では水は農作業の重要な動力源であり、かつては至る所で水車が見られたという。園内にこれほど多くの歴史遺産が展示されていたとはこれまで気付かなかった。

 なかでも出色は、南門そばにある砺波郷土資料館だろう。外観は強固な城のような資料館だが、中に入って息をのんだ。艶(つや)やかなケヤキの材で仕上げられた吹き抜けの洋風広間。高い天井には「金唐革紙(きんからかわかみ)」と呼ばれる豪華な装飾が施されている。柱の彫刻はギリシャ神殿のようだ。

地図

 コの字型に据え付けられたカウンターが物語るように、この建物は明治時代に建てられた銀行。市内の本町から移築したものだ。郷土の発展の一端を担ってきたカウンターにそっと指を滑らせてみる。その光沢は時が磨き上げた美しさだ。

 砺波を象徴するチューリップ公園。早春の静かな園内をゆっくりと散策し、この土地の歴史に触れるのもまた魅力的だ。

2004年3月19日  読売新聞)
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