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犀星賞「稲荷道」電子書籍で販売

きょう発売

   第5回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)を受賞した埼玉県所沢市、山路時生(本名・山田修治)さんの小説「稲荷道」が29日、中央公論新社から電子書籍として発売された。価格は100円(税別)。

 受賞作は、小さな集落で暮らす孤独な女の子が主人公。大好きだった隣家の老女の死や両親の激しいけんかに直面する中、少年の幽霊との交流を通して安らぎの場所を見つける物語。選考委員の加賀乙彦さんは「現代文学に、懐かしい里人の世界をあえて提示した意欲的な作品」と語り、山路さんの妻の出身地である金沢市の方言で進む会話も好評だった。

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 作品はアマゾンのサイト「キンドルストア」などで購入できる。

(2016年7月30日 読売新聞)


「経験したことない喜び」

室生犀星文学賞

 第5回室生犀星文学賞の表彰式が26日、金沢市千日町の雨宝院で開かれ、短編小説「稲荷道」で受賞した埼玉県所沢市の山路時生(本名=山田修治)さん(66)は「これまでに経験したことのない喜びに浸っています」と笑顔を見せた。

大野北陸支社長から表彰される山路時生さん(右)(26日、金沢市千日町で)

表彰式 山路さん、次作へ意欲

 受賞作は、不条理に翻弄される主人公の少女が少年の幽霊と交流し、安らぎを得る物語を少女の視点で描いた。

 表彰式で読売新聞北陸支社の大野茂利支社長は「金沢弁を中心に展開するやさしい感じの作品。次作も楽しみにしています」とあいさつし、正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録を贈呈した。賞の終了については「5回を迎え、一定の役割を果たし得たと考えています」と説明した。

 山路さんは岐阜県高山市出身。44歳の時に胃がんで胃を全摘出し、闘病生活を経て本格的に小説を書き始めた。公務員を務めながら家庭を支えてくれた妻恵子さん(67)=金沢市出身=に方言を教えてもらい、作中の会話文に金沢弁を織り交ぜた。 表彰式では、「妻がいなければ賞を取れなかった」と感謝を語り、「室生犀星の名に恥じない作品を書き続けたい」と意欲をみせた。

 27日は金沢市内の恵子さんの実家でゆっくりした後、市内観光をして埼玉に帰るという。

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室生犀星文学賞は、今回で終了する。

選考委員

金沢の空気漂う 中沢けいさん

中沢けいさん

 金沢郊外の白山が見える辺りの澄みきった空気や宵闇が漂い出す雰囲気が自然と伝わってきた。室生犀星という作家の作品には、金沢が育んできた何かが隠れている。「稲荷道」も金沢弁を使って昭和の風景を描いていて、受賞にふさわしい作品だった。

昔の面影色濃く 加賀乙彦さん

加賀乙彦さん

 「幼年時代の孤独な秋」という設定が、とても生きている。田舎の景色と人情など、昔の面影が色濃く出ていた。作中の金沢弁は、金沢出身の奥さんに教わったと聞いた。夫婦の成果であり、現代文学に、懐かしい里人の世界をあえて提示した意欲的な作品だった。

横笛奏者藤舎さんオリジナル曲演奏

篠笛で演奏する藤舎秀代さん
 

 表彰式後に開かれた祝賀会では、金沢市在住の横笛奏者藤舎秀代さん(64)が、この日のために作ったオリジナル曲をしの笛で演奏。室生犀星の「抒情小曲集」にある「ふるさとは遠きにありて思ふもの」との詩句をモチーフにした澄み切った音色が会場に響き渡った。 市内の男声合唱団「金沢メンネルコール」のメンバーも「ふるさと」など4曲を合唱し、花を添えた。

雨宝院で犀星忌

 表彰式が行われた26日は、室生犀星(1889〜1962年)の命日でもある。この日午前には、犀星が幼少期を過ごした雨宝院で「犀星忌」が営まれ、約20人の文学ファンらが文豪をしのんだ。

 参列者は高山光延住職の読経に合わせて犀星の詩をつぶやいたり、同寺の庭のアンズが登場する作品「杏っ子」の情景を思い浮かべたりしながら合掌していた。

 高山住職は「この寺の住職として、犀星先生に思いをはせる場を設けることは使命だと思っている。これからも法要を続けていきたい」と話していた。

【主催】読売新聞北陸支社
【共催】金城学園
【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社
【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品


(2016年3月27日 読売新聞)





 稲荷道(2016年3月22、23日 読売新聞 石川・富山版)

受賞作のあらすじ

 学校で仲間外れにされ、孤独だった少女が、下校途中に神社の境内で見知らぬ少年と知り合う。少年と毎日遊ぶようになるが、近所の優しい老女の急死や両親の激しいけんかに直面し、少女は傷付き、孤独を深めていく。

 ある日、少女が泣いていると、少年が自分の家で遊ぼうと言って慰める。一緒に遊んでいると、少年の体が透けていることに気付く。少年との数か月の交流を通して、少女はいつしか笑顔を取り戻し、安らぎの場所にたどり着く。



少女の物語金沢弁で

犀星賞「稲荷道」 山路さん 「小説書いて誰かの力に」

第5回室生犀星文学賞の受賞が決まった山路時生さん(9日、埼玉県所沢市で)=繁田統央撮影

第5回室生犀星文学賞が17日、埼玉県所沢市の山路時生(やまじときお)さん(66)の短編小説「稲荷道」に決まった。山路さんは「全国規模の文学賞の受賞は初めて。信じられない」と笑顔を見せた。

 受賞作は、「敬体を用いた地の文」と「金沢弁で交わされる会話文」を織り交ぜ、不条理に翻弄される少女が少年の幽霊と交流し安らぎを得る物語。選考委員で作家の加賀乙彦さんは「金沢弁の勝利。文章も安定していて、都会育ちじゃない人ならではの風景のとらえ方がある」と評した。

 岐阜県高山市出身。小学5年の時に世界文学全集を読んだのをきっかけに文学にのめり込んだ。特にお気に入りだったのは「トム・ソーヤーの冒険」。自然の中で遊ぶのが好きだった自分を重ね、本が黒く汚れて文字がかすむほど繰り返し読んだ。

 高校生になると室生犀星の「性に眼覚める頃」なども読むようになり、大学は青山学院大文学部に進学。古本屋に通い詰め、小説を月に30冊ほど買っては読みふけった。卒業後は業界紙の記者やビジネス書の編集者として働き、活字にこだわり続けた人生だった。

 44歳の時に胃がんの宣告を受け、職を離れた。抗がん剤を服用する闘病生活の中で、「社会の役に立てていない」と一時は塞ぎこんだが、「小説を書くことで誰かの力になれるかもしれない」と活字へのこだわりを持ち続けた。

 今作を含め、これまでに短編を中心に16作を手掛け、文学賞への応募は5度目。「稲荷道」を書くきっかけは、2001年に脳卒中で倒れ、長い病床生活の末、13年に亡くなった母トキ子さんの存在だった。作中で孤独な少女を優しく励ます女性は、工場で働きながら家族を支えた母がモデル。「最後まで笑顔を絶やさず、力強く生きた人だった」という。ペンネームの「山路時生」は母の旧姓名「山次トキ子」を元にしている。

 インターネットで目に留まった室生犀星文学賞への応募を決めた時、「石川県の香りがするような作品にしよう」と金沢市出身の妻恵子さん(67)に金沢弁を教わりながら、会話文を書き換えた。

 表彰式が行われる雨宝院(金沢市千日町)は妻の実家の近所とあって、「不思議な縁を感じる。受賞はとても励みになった。これからも書き続けていきたい」と話した。次作は、肉体の衰えを感じつつも地域とのつながりの中で明るく生きる老人を描く予定で、「同世代を励ますような作品を書きたい」という。

 

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 表彰式は26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。受賞作全文は後日、石川、富山県版とヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載される。


巧妙な文体と空間構成

最終選考に臨む作家の中沢けいさん(左)と加賀乙彦さん(8日、読売新聞東京本社で)

 第5回室生犀星文学賞には、国内だけでなく、ドイツやオーストラリアなど海外4か国からの作品を含め546編の応募があった。16歳から86歳まで幅広い世代の力作が寄せられ、1次選考で49編に絞り込まれた後、2次選考を経て最終選考に5編が残った。

 8日に東京・大手町の読売新聞東京本社で行われた最終選考では、北陸支社の大野茂利支社長が司会を務め、作家の加賀乙彦さん、中沢けいさんの2人が審査を担当した。

 加賀さんと中沢さんは、作品の持ち味や課題などを丁寧に分析し、一つひとつ講評した。受賞作に輝いた山路時生さんの「稲荷道」について、加賀さんは「牽引(けんいん)力があって、読んでいると自然に懐かしい景色が見えてくる。出だしの一行もとてもよかった」と称賛した。中沢さんは「金沢の言葉が、作品に溶け込んでいる。文章の中に昭和の風景がうまく描き出されていた」と高く評価した。

 

 

受賞作 あらすじ

 学校で仲間外れにされ、孤独だった少女が、下校途中に神社の境内で見知らぬ少年と知り合う。少年と毎日遊ぶようになるが、近所の優しい老女の急死や両親の激しいけんかに直面し、少女は傷付き、孤独を深めていく。

 ある日、少女が泣いていると、少年が自分の家で遊ぼうと言って慰める。一緒に遊んでいると、少年の体が透けていることに気付く。少年との数か月の交流を通して、少女はいつしか笑顔を取り戻し、安らぎの場所にたどり着く。

講 評

民話風の好短編 加賀乙彦さん

 山路時生さんの「稲荷道」が、幼年期の孤独な秋を描いて、独特な世界を贈ってくれた。小学校6年生の女の子は、学校には友だちもおらず、学校の帰りには、どこかの鄙(ひな)びた里の広場でひとり遊びをしている。時代はわからぬが、戦争の影はなく、戦後20年ほどたったころであろうか。

 そこに、これも孤独な少年が登場する。なまりのある会話、こどもっぽい地の文章が女の子の世界をすこし照明してみせる。このあたりの手並みは優れている。両親は仲が悪く、元気のいい近所の青年は事故でけがをし、親切なばあちゃんは急死する。女の子の世界はせばまっていく。

 これは現代の民話である。舞台となっている稲荷道は、戦後の経済発展が破壊したなつかしい田舎を保存して示している。そして会話を支えた方言は、里びとの心を守ってきたどこかの地方のものであろう。ほのぼのとした好短編である。

金沢の言葉のおもしろさ 中沢けいさん

 受賞作は山路時生さんの「稲荷道」ということになった。少女の語りに交じる会話は、金沢の言葉だということで、金沢郊外の空気が伝わる。手堅い表現のなかに昭和後期の雰囲気がよく捉えられていた。結末もまた自然であった。

 原雪絵さんの「海へ」は亡くなった夫の子がフランスから現れるというストーリーの面白さは優れていたが、細部の整合性を整える必要があり、また時代背景にも気を配れば面白い作品となっただろう。荒井隆志さんの「宝永火口」は自宅から見える富士の噴火に怯(おび)える妻と、横山大観の富士の絵の贋作(がんさく)作りにかかわる失業中の夫の不安の響き合いを興味深く読んだ。石川洋一さんの「送り届けられた封書」はエピソードを詰め込み過ぎのきらいがあった。間零さんの「帰還のとき」は左遷されたサラリーマンの心理を今少し彫り込んで描けばよい作品になったのではなかろうか。

 

最終選考に残った作品とあらすじ

作品名・作者 あらすじ
「海へ」 
原雪絵さん  
(北海道)
 夫を亡くした女性のもとに、夫の子どもを名乗る青年が現れる。夫の思い出話を青年と共有することで、次第に喪失感から立ち直っていく。
「宝永火口」 
荒井隆志さん  
(東京都)
 失職した美大卒の主人公が、知人から横山大観の水墨画の偽作を描くように頼まれる。金と己の技量を試すために作製に取りかかる。
「帰還のとき」 
間零さん  
(東京都)
 上司との対立で出世の道から外れたサラリーマン。居酒屋で出会った詩人との交流を通して、前向きな気持ちを取り戻していく。
「送り届けられた封書」 
石川洋一さん  
(東京都)
 終戦の年に小学校を卒業した主人公が戦後70年を機に卒業名簿を作り直す過程で、かつて恋心を抱き、消息不明となった少女の運命を知る。

  【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2016年3月18日 読売新聞)

犀星賞最終選考に5点

作品について話し合う2次選考委員(金沢市で)

応募総数546点 3月上旬に決定

 第5回室生犀星文学賞の2次選考会が金沢市内で開かれ、最終選考に5点が残った。今回の応募総数は546点。1次選考で49点に絞り込まれていた。

 2次選考は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さん、読売新聞北陸支社の大野茂利支社長が担当した。

 室生犀星文学賞は、金沢市生まれの犀星の没後50年を記念して読売新聞北陸支社が創設。短編小説が対象で、受賞作1点に正賞の九谷焼の文鎮と賞金50万円を贈る。

 最終選考会は3月上旬の予定で、選考委員は作家で精神科医の加賀乙彦さん、作家で法政大教授の中沢けいさん。表彰式は3月26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 受賞作の全文は石川、富山版とヨミウリ・オンライン「北陸発」で掲載する。

最終候補は次の通り(敬称略)。

 「海へ」(札幌市厚別区、原雪絵)▽「宝永火口」(東京都練馬区、荒井隆志)▽「稲荷道」(埼玉県所沢市、山路時生)▽「帰還のとき」(東京都国分寺市、間零)▽「送り届けられた封書」(東京都昭島市、石川洋一)

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2015年1月28日 読売新聞)

犀星文学賞49点1次選考通過

2次選考来月下旬

 第5回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)は応募総数546点のうち、49点が1次選考を通過した。今後、2次選考、最終選考を経て、受賞作が決まる。

 通過作品の応募者の内訳は男性32人、女性17人。60歳以上が6割近くを占め、10〜20歳代は約1割だった。東京都からの応募作品が10点と最も多く、北海道が4点。埼玉、石川、兵庫の各県からがそれぞれ3点だった。

 2次選考会は1月下旬に開く。委員は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さんら4人。

 最終選考会は3月上旬の予定で、作家の加賀乙彦さんと中沢けいさんが審査する。表彰式は、犀星の命日である3月26日、金沢市千日町の雨宝院で行う。

(2015年12月17日 読売新聞)


犀星文学賞546点集まる

国内外から寄せられた室生犀星文学賞の応募作品(読売新聞北陸支社で)

米国など4か国からも 来年3月26日表彰式

 第5回室生犀星文学賞は10月末で応募を締め切り、国内外から546点が集まった。作品は4割近くが関東からで、米国や豪州など海外4か国からも応募があった。50歳代以上の応募者が全体の半数を占め、10〜20歳代からも92点が寄せられた。

 応募者の内訳は男性66%、女性34%。都道府県別では島根、香川両県を除く全国各地から応募があり、東京都が最も多い94点。埼玉県が37点、大阪府が36点と続いた。富山県は26点、石川県は29点だった。最高齢は86歳で2人、最年少は16歳で4人いた。

 同文学賞は、室生犀星(1889〜1962年)の没後50年を記念し、読売新聞北陸支社が創設。短編小説が対象で、3次にわたる審査を経て決定する受賞作1点に、正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円が贈られる。最終選考委員は作家で精神科医の加賀乙彦さんと、作家で法政大学教授の中沢けいさん。

 第5回の表彰式は、犀星の命日である来年3月26日、金沢市の雨宝院で予定している。

主催・読売新聞北陸支社
▽共催・金城学園
▽後援・石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社
▽協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2015年11月28日 読売新聞)


犀星が好んだ石川の味

海の幸を送るように知人に求めた手紙が並ぶ展示室

 金沢三文豪の一人、室生犀星(1889〜1962年)が好んだ石川の味覚を手紙や文章など約130点で紹介する企画展が、金沢市千日町の室生犀星記念館で開かれている。

 犀星は人生の大半を東京で過ごしたが、金沢の義兄に手紙を書き、香箱ガニやブリを干した「いなだ」などの送付を頻繁に依頼していた。当時のエッセーには「郷里ほど冬の間の味覚の食物に豊富なところは少いようである」と記し、アユやクチコなどを気に入っていたことも分かる。

 犀星は金沢の料亭にもよく通い、犀川沿いにある老舗「つば甚」(寺町)は小説「杏つ子」に登場している。「大友楼」(尾山町)の当時の主人大友奎堂(けいどう)氏と親交が深く、犀星が「かぶらずし」を求めるなど、大友氏へ送った29通の手紙も公開されている。嶋田亜砂子学芸員は「金沢が誇る食の豊かさを、犀星の言葉を通して味わってほしい」と話している。

 来年3月6日まで。午前9時半〜午後5時。一般300円。同館(076・245・1108)。

(2015年11月22日 読売新聞)


犀星賞受賞作 電子書籍に

きょう発売

 

 第4回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)を受賞した東京都世田谷区、おちつかなさん(本名=宮岸孝吉さん)の小説「父の勲章」が31日、中央公論新社から電子書籍として発売される=写真=。価格は100円(税別)。

 受賞作は、父の葬儀で北陸に里帰りした30代の男性が主人公。保護司をしていた父の書斎を整理していて、非行少年と向き合っていた父の姿を思い出し、自らの生き方を見つめ直すという物語。選考委員の加賀乙彦さんから「文体を変化させて、主人公の成長を表現できていた」と評価された。

(2015年7月31日 読売新聞)


第5回室生犀星文学賞 作品募集

=作品募集要項=

 読売新聞北陸支社は、金沢市生まれの詩人・小説家、室生犀星(1889〜1962年)の没後50年にあわせ、室生犀星文学賞を2011年度に金城学園(本部・金沢市)とともに創設しました。受賞者には正賞として九谷焼の文鎮と、賞金50万円を贈ります。

【応募作品】未発表の短編小説。テーマはなし。

【応募規定】■枚数は400字詰め原稿用紙50枚以内。ワープロ原稿の場合はA4サイズの用紙に縦書きで20字×20行で印刷すること。必ずページ数をふって、右肩を綴じてください。手書きも可。二重投稿はできません。■必ず表紙をつけてください。題名、氏名(筆名の場合は本名も)、ふりがな、住所、電話番号、職業、生年月日、性別、メールアドレスを表紙に明記してください。

【締め切り】2015年10月末 当日消印有効

【選考委員】加賀 乙彦さん (作家・精神科医)       中沢 けいさん (作家・法政大学教授)

【発表】  2016年3月、読売新聞紙上で。全文は読売新聞石川版、富山版、ヨミウリオンライン「北陸発」に掲載します。

【その他】 受賞作品の著作権などは読売新聞社に帰属します。応募原稿は返却しません。選考に関する問い合わせには応じられません。

【主催】読売新聞北陸支社 【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社
【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

【応募先】  〒933-8543 富山県高岡市下関町4の5       読売新聞北陸支社「室生犀星文学賞係」

(2015年5月2日 読売新聞)


犀星賞の表彰式

 第4回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の表彰式が26日、金沢市の雨宝院で行われ、小説「父の勲章」で受賞した東京都世田谷区、会社役員おちつかな(本名=宮岸孝吉)さん(60)に正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録が読売新聞北陸支社の大野茂利支社長から手渡された。おちつかなさんは石川県野々市市出身で、「古里の文豪を冠した文学賞を受賞できて夢のようです」と喜んだ。

(2015年3月27日 読売新聞)


犀星賞生涯の思い出に

おちつかなさん喜び語る

 第4回室生犀星文学賞の表彰式が26日、金沢市の雨宝院で開かれ、短編小説「父の勲章」で同賞に輝いた東京都世田谷区、会社役員おちつかなさん(60)が「犀星の命日(26日)に文学賞をいただき、生涯の思い出になる」と喜びを語った。
大野北陸支社長から表彰されるおちつかなさん(右)(26日、金沢市千日町の雨宝院で)

雨宝院で表彰式

 

 作品は、父の葬儀で古里へ戻った塾講師の男性が、生前に黙々と保護司の務めを果たした父の足跡をたどり、生きる意味を見いだす姿を描いた。

  表彰式で読売新聞北陸支社の大野茂利支社長は「淡々とした文体にひきこまれる作品。これからも味わいのある作品を書いてください」とあいさつし、正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録を贈呈した。

 おちつかなさんは野々市市出身。「父の勲章」は、自身の体験をもとに書いた私小説で、「父のことを思い出しながら少しずつ筆を進めた。違うストーリーでいくつか作品を書いたが、受賞作が父を一番描けた」と振り返った。

  北陸新幹線開業にも触れ、「私の作品は東京と金沢の距離があることを前提に書かれており、2時間半で結ばれるようになると成立しない。(新幹線開業前の)今回の犀星文学賞が私の作品にとって最後の光だった。本当にありがとうございました」と話した。金沢には飛行機で来たが、27日には、初めて北陸新幹線に乗って東京へ帰るという。

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モレシャンさん仏語で詩を朗読

犀星の詩を朗読する室生洲々子さん

詩をフランス語で朗読するモレシャンさん
 室生犀星文学賞の表彰式後に開かれた祝賀会では、犀星の孫で室生犀星記念館の名誉館長を務める室生洲々子さんが、犀星の詩「切なき思ひぞ知る」を朗読した。その後、金沢市在住のエッセイスト、フランソワーズ・モレシャンさんがフランス語に翻訳して詩を朗読し、会場を沸かせた。

 このほか、市内の男声合唱団「金沢メンネルコール」のメンバーが「ふるさと」を合唱するなどし、祝賀ムードを盛り上げた。

選考委員

どんでん返し鮮やか 作家 加賀乙彦さん

加賀乙彦さん

 文体が淡々として特徴がなく、最初読んだ時はあまりひかれなかった。後日読み直したら、落ち着いた筆致に驚いた。短編は難しく、決まった分量でぴたっと収まる作品は少ない。受賞作は無駄な部分をそぎ落とし、最後のどんでん返しを鮮やかに描けている。

金沢の記憶立ち上る 作家 中沢けいさん

中沢けいさん

 最初は硬い文章だが、物語が進むにつれて少しずつほぐれていく。主人公が、父の臨終をみとり、回想のなかで父の素顔に触れながら感情が和らいでいく様子が、文体を通して表れている。作品を読み、昔訪れた金沢の古い記憶が立ち上ってきた。

【主催】読売新聞北陸支社
【共催】金城学園
【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社
【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2015年3月27日 読売新聞)





受賞作のあらすじ

 主人公の私は職を転々とした後、小さな塾で臨時の英語講師をしている30代の男性。父の死後、自宅2階の父の書斎を整理していて会報誌に挟まれていた包装紙を見つける。そして、自分で作った料理を手土産に、保護司の父を訪ねてきた料理人見習いの少年を思い出す。その料理を家族に振る舞い、「うまいだろう」と満足そうな表情で何度も聞いていた父。その店を探し出したが、そこに少年の姿はなかった。しかし、つかの間のぜいたくを楽しみ、いつかこのような店の常連になれるよう前向きに生きていこうとの気持ちが芽生える。



室生犀星文学賞決まる

 第4回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の受賞者が20日発表され、東京都世田谷区の会社役員おちつかなさん(本名=宮岸孝吉さん)(60)の小説「父の勲章」に決まった。表彰式は26日、金沢市の雨宝院で行われる。

 受賞作は、非行少年らの更生を手伝う保護司だった父を誇りに、塾講師の男性が人生を見つめ直す内容。おちつかなさんは「古里の文豪を冠した賞をいただくなんて夢のよう」と喜びを語る。同賞は室生犀星没後50年を機に、読売新聞北陸支社が2011年度に創設した。未発表の短編小説が対象で、正賞は九谷焼の文鎮、副賞は50万円。

(2015年3月21日 読売新聞)



保護司の父足跡たどる

犀星賞受賞 おちつかなさん

室生犀星文学賞の受賞が決まったおちつかなさん(東京都千代田区で)=池谷美帆撮影

 短編小説「父の勲章」で第4回室生犀星文学賞の受賞が決まった東京都世田谷区の会社役員、おちつかなさん(60)が「父の足跡を作品にしたかった。夢のようだ」と喜びを語った。

 

 短編小説「父の勲章」で第4回室生犀星文学賞の受賞が決まった東京都世田谷区の会社役員、おちつかなさん(60)が「父の足跡を作品にしたかった。夢のようだ」と喜びを語った。

 受賞作では、父の葬儀で古里へ戻った塾講師の男性が、非行少年らの更生を助ける保護司を務めていた父の足跡をたどり、生きる意味を見つける姿を描いた。

「自分の父も保護司だった。誰に褒められるわけでもなく、社会のためにと頑張った父親の足跡を作品の中に残したかった」と振り返った。

 石川県野々市市出身。日本文学にのめり込むようになったのは早大3年で1年間米国に留学し、英語に囲まれ、寂しさを感じている時。偶然教会で見つけた1冊の文芸誌を擦りきれるまで読み込んだ。日本文学の魅力を「余白の多さ」だと表現し、「英語のように細部まではっきりと書かないことで、人の心へうねりとなって迫る」と話す。社会人になってからは、遠藤周作や吉村昭の作品を全編読んだ。

 銀行に就職後、出資先の会社に出向。その後転籍し、仕事は多忙を極めた。激変する生活の中で心の支えとなったのが、小説だった。

 15年前から小説を書き始め、応募した文学賞は落選続きだったが、書くことはやめなかった。現在も転籍先企業の執行役員として働き、通勤時間などの合間に執筆する。着想は周りのごく普通の人たちから「人間観察」して得るという。

 「夜行バスに乗った時、近くの席の人の表情を見てその人の物語を想像してしまう」と笑う。

 ペンネームの「おちつかな」は、落ち着きのない性格を改めてほしいと妻が考えたが、重みのある文章を書かなければという自らへの戒めもある。

 小説の魅力は終着点が見えないこと。書き手にとってそれが楽しく、「どんな物語になるか最後まで分からないからやめられない」と言う。次作は走り幅跳びに打ち込み続けた長男をモデルに長編小説を書くつもりだ。

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 表彰式は26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。受賞作全文は後日、石川、富山県版とヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載される。


巧妙な文体と空間構成

第4回室生犀星文学賞の最終選考会に臨む中沢けいさん(左)と加賀乙彦さん

 第4回室生犀星文学賞には、前回より209編多い752編の応募があった。国内だけでなく、アメリカやドイツなど海外4か国からも作品が寄せられ、15歳から86歳まで幅広い世代の力作が集まった。1次選考で66編に絞り込まれ、2次選考を経て最終選考に5編が残った。

 6日に東京・大手町の読売新聞東京本社で行われた最終選考では、大野茂利・北陸支社長が司会を務め、作家の加賀乙彦さん、中沢けいさんの2人が審査を担当した。

 加賀さんと中沢さんは、理由を交えて作品一つひとつを講評し、受賞作に輝いたおちつかなさんの「父の勲章」について、加賀さんは「何気ない場面の描き方がうまい。文体を変化させて、主人公の成長を表現できていた」と称賛し、中沢さんは「空間構成と、後半の伸びやかな文章にひきつけられた」と評価した。

 

受賞作「父の勲章」あらすじ

 古里の北陸を離れ、東京で英語の塾講師として日々を食いつないでいた主人公に、父の危篤を知らせる電話が入る。

 父は、非行に走った少年や少女の更生を助ける保護司を務めていた。自分が少年の頃、同年代の若者が何人も父を訪ねては、消えていった。社会に出た彼らは恩を忘れるように、父との連絡を絶っていた。

  亡くなった父に残ったものなんてあるのか――。葬儀後、主人公は父の書斎で料亭の名が入った包装紙を見つけた。一人の少年が、父へ持ってきた鴨料理のことを思い出した。

 少年が残していった包装紙を手がかりに、父の足跡をたどりながら、仕事への情熱や誇りを取り戻す主人公の姿が描かれている。

見事な逆転劇

 「父の勲章」は、ずっと以前に読んだときには、文体も特徴がないし、主人公は平凡な落ちこぼれで関心をひかないしで、受賞作とは思わなかった。

 しかし、最終選考の前日、五つの候補作を読み直してみると、これこそ秀作と言う具合に、評価がひっくり返った。たとえば日にちを律儀に書き込む日記風の構成、軽いメモ風の文章、日の当たらぬ主人公の生活感覚が、すべて人に遅れて、うだつの上がらない人間を描くには必要な工夫だと見えてきた。

 その人にとって、父親の死に出会って、その一生を考えてみると、その一生は自分と同じように見えた。父は保護司をしていて、多くの非行少年に会っていたが、それは保護期間が終われば関係が切れてしまうむなしい仕事であった。父の一生を思い、その介護に疲れ切った妹を気の毒に思いながら、保護司である父に感謝した少年がいたことに気付く。そして当の少年の働く小料理屋に行く。実に見事な逆転劇である。

軌跡の描写素直

 「父の勲章」は父の臨終に立ち会いながら、物堅く生きた父の生をたどり直す軌跡が素直に描かれていた。最後の料理屋の場面が金沢らしい。

 小森佳子さんの「夜盛り」に、私はたいへん好感を持った。父の再婚相手の弟と女子高校生の揺れ動く関係がさっとひと筆書きの軽やかな文体で描かれている。人の人生がながくなったので、このような曖昧で微妙な関係もありうるだろう。

 北脇果歩さんの「咲く花」はコミュニケーション不全を象徴化した作品で面白かった。

 小沢真理子さんの「バックミラー」はタイトルどおり、年老いた父の生の日々が遠ざかって行く様子を描き、なかなか達者な筆使いであった。もう一つ印象に残るとっかかりがほしかった。

 林貞行さんの「真冬日」は歌枕の地を舞台に、現代短歌を絡ませる趣向が、遠い日の恋を語る口調となじんでいないところが惜しかった。

最終選考に残った作品とあらすじ

作品名 作者(住所) あらすじ
「咲く花」 北脇果歩  (千葉県) 「言葉が、無くなってしまいますように」と願っていた主人公が、1人の少女との出会いから伝えることの尊さを知る。
「夜盛り」 小森佳子  (岡山県)  疎外感を抱いていた少女が、都会の騒がしさを離れ、岡山で過ごす一夏。父の再婚相手の弟へ思いを寄せる淡い恋模様を描く。
「バックミラー」 小沢真理子  (茨城県) 末期がんの父が入るための養護施設を一緒に探す娘。ふとした父の行動や周りの人の言葉から幼少期を回想していく。
「真冬日」 林貞行  (奈良県) 新聞社を退職した主人公に届いた1通の手紙。詠まれた短歌を手がかりに、学生時代の青春を追いかける。

  【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2015年3月21日 読売新聞)

犀星賞5点が最終選考へ

最終候補について話し合う2次選考委員(金沢市内で

3月初め受賞作決定

 最終選考会は3月初めに予定している。最終選考委員は小説家で精神科医の加賀乙彦さんと、作家で法政大学教授の中沢けいさん。表彰式は犀星の命日である3月26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 同文学賞は、金沢市生まれの犀星の没後50年を記念して読売新聞北陸支社が2011年度に創設した。短編小説が対象で、受賞作1点に正賞の九谷焼の文鎮と賞金50万円を贈る。受賞作の全文は石川、富山版とヨミウリ・オンライン「北陸発」で掲載する。

最終候補は次の通り(敬称略)。

▽「咲く花」(千葉県木更津市、北脇果歩)▽「夜盛り」(岡山県津山市、小森佳子)▽「バックミラー」(茨城県笠間市、小沢真理子)▽「真冬日」(奈良県広陵町、林貞行)▽「父の勲章」(東京都世田谷区、おち・つかな)

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2015年1月28日 読売新聞)



犀星文学賞1次通過66点  2次選考は来年1月下旬

 第4回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の1次選考通過作品66点が決まった。今後、2次選考、最終選考を経て、受賞作を発表する。

 2次選考会は、来年1月下旬に開く。委員は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さんら4人。

 最終選考会は3月上旬に予定し、作家の加賀乙彦さんと中沢けいさんが審査する。表彰式は、犀星の命日にあたる3月26日、金沢市千日町の雨宝院で行う。

 1次選考通過作品は以下の通り(敬称略)。通過作品はヨミウリ・オンライン「北陸発」にも掲載する。


【北海道】
  • 「ワンスモア」柊千代子
  • 「夜の気配」真野光一
【青森県】
  • 「クローバーの手紙を」森由紀
【宮城県】
  • 「子殺しの安息」山埜中石
  • 「妙ちゃん」八重樫久
【福島県】
  • 「椅子」遠藤雄一
【茨城県】
  • 「夜の底」福虫登
  • 「バックミラー」小沢真理子
【栃木県】
  • 「記憶の舞台に躍りだした人々」佐久野丈
【群馬県】
  • 「七夕さま」神宮みかん
【埼玉県】
  • 「For Dear Life」土屋しょう     
  • 「アランに寄せて」原圭依子     
  • 「都を漂う」鎌田昭成     
  • 「隣の鈴木さん」谷山道花
【千葉県】
  • 「初恋物語」葛岡昭男     
  • 「わたしの山日記」上田真弓     
  • 「約束の思想」並木通り     
  • 「咲く花」北脇 果歩     
  • 「日々からの耳打ち」加藤由佳     
  • 「親王の還暦」仲谷克巳
【東京都】
  • 「よしじいとロビの10年」富士山純子     
  • 「桜咲くころ」三上真一     
  • 「無音の葉動」山田真弓     
  • 「しほりの夢」佐宮圭     
  • 「捧ぐ」遊座涼     
  • 「湯村の一夜」佐藤文平     
  • 「父の勲章」おちつかな     
  • 「車イスのポケットには」高橋延     
  • 「走馬灯株式会社 雑司ケ谷感應寺は今夜も夢をみる」小林未來     
  • 「じいちゃんの水」倉本彩絵花     
  • 「窺天鏡―天保のハレー彗星」誉川昭     
  • 「松太郎スタヂオ」湯浅良子
【神奈川】
  • 「冬を感じるとき」文月彰良     
  • 「おいしいっすね」矢代稔
【富山県】
  • 「仏壇売り」神一樹    
  • 「ふたたびの地」佐倉 れみ    
  • 「墓標」田中豊
【石川県】
  • 「魚眠洞さんと石碑」向山登
【長野県】
  • 「半分姉妹」宮坂朝子     
  • 「外套に包まれて」中沢浩太
【静岡県】
  • 「世吉の願い」西国葡     
  • 「五十九の夏」彩里 れい     
  • 「突風」星野有加里
【愛知県】
  • 「闇の中」津之谷季     
  • 「惚れっぽい子」坂口 雄城
【京都府】
  • 「ぼくの友達」真方翔平     
  • 「演劇都市」松宮 信男
【大阪府】
  • 「犬養木堂&孫文&滔天の見果てぬ夢」宮坂 象遙     
  • 「バイバイ」泉水明     
  • 「対岸の出来事」椿けい     
  • 「夏風」早弓陽香瑠     
  • 「よのくんのやまのぼり」越智駿平     
  • 「孤島でニャー」池田耕路義     
  • 「サクラマスの泳ぐ川」樫本優清     
  • 「Flush」中村浄理
【兵庫県】
  • 「母がそう言ったから」久保にわか     
  • 「路頭に漂う」新井哲成
【奈良県】
  • 「真冬日」林貞行     
  • 「青い海亀」蠍座の黒猫
【和歌山県】
  • 「赤いリュック」逸見真由
【島根県】
  • 「空華」山下クミ
【岡山県】
  • 「光る場所」岡崎優平     
  • 「夜盛り」小森佳子
【徳島県】
  • 「梁山泊の人魚姫」有岬恋明
【香川県】
  • 「天使の素描」天乃辺哲
【大分県】
  • 「孫のスカート」江野尻悦子
(2014年12月18日 読売新聞)


犀星文学賞ファイル閲覧 金沢の記念館

閲覧コーナーで読むことができる過去の受賞作を集めたファイル(金沢市の室生犀星記念館で)

 第4回を迎える室生犀星文学賞(主催・読売新聞北陸支社、共催・金城学園)のこれまでの受賞作が読むことのできるファイルが、金沢市千日町の室生犀星記念館に設置された。ファイルは2階の閲覧コーナーで読むことができる。

 同文学賞は室生犀星(1889〜1962年)の没後50年を記念して、読売新聞北陸支社が創設した。対象は、短編の小説。3次にわたる選考をへて受賞作1点に正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円が贈られる。最終選考委員は、小説家で精神科医の加賀乙彦さんと、小説家の中沢けいさん。

 ファイルに収められたのは第1〜3回の受賞作「二日月」(南綾子・作)「風が動く街」(緋野由意子・作)「雪虫」(安藤憲一・作)の3作品。

 犀星の孫で同館名誉館長の室生洲々子さんは「これまでの受賞作を多くの方々に読んで楽しんでもらいたい」と話している。入館料は一般300円、65歳以上200円、高校生以下無料。

(2014年11月25日 読売新聞)


犀星文学賞応募752点

室生犀星文学賞に寄せられた応募作品(読売新聞北陸支社で)

 第4回室生犀星文学賞は10月末で応募を締め切り、国内外から前回より209点多い752点が集まった。応募者のうち50歳代以上が半数を占めるが、20歳代からも111点が寄せられた。

 応募者の内訳は男性60%、女性40%。都道府県別では東京都が147点(20%)と最も多く、神奈川県の57点、大阪府の52点と続く。石川県は40点、富山県は31点だった。最高齢は86歳の男性、最年少は15歳の男女だった。国外はアメリカやドイツなど4か国から7人の応募があった。

 同文学賞は室生犀星(1889〜1962年)の没後50年を記念して、読売新聞北陸支社が創設した。対象は短編の小説で、3次にわたる選考をへて受賞作1点に正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円が贈られる。最終選考委員は小説家で精神科医の加賀乙彦さんと、小説家の中沢けいさん。

 1次選考通過作のタイトルと氏名、住所(都道府県まで)は後日、ヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載する。

 第4回の表彰式は来年、犀星の命日である3月26日に、金沢市の雨宝院で予定している。受賞作は読売新聞の石川、富山版と「北陸発」で紹介する。

 

 主催・読売新聞北陸支社▽共催・金城学園▽後援・石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社▽協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2014年11月21日 読売新聞)


最終選考委員の中沢けいさん「今にふさわしい作品を」

作品募集10月末まで

最終選考委員
中沢けいさん

 第4回室生犀星文学賞(主催・読売新聞北陸支社、共催・金城学園)は10月末まで、作品を募集している。最終選考委員は、作家で精神科医の加賀乙彦さんと作家で法政大学教授の中沢けいさん。中沢さんは昨年11月に死去した辻井喬さんの代わりに入った。中沢さんは高校生の時に執筆した「海を感じる時」で群像新人文学賞を受賞。近著に「動物園の王子」がある。中沢さんに「室生犀星賞に応募する皆さんへ」と題した文章を寄稿してもらった。

     ◇

 室生犀星の小説を読みながら、私は子ども時代から思春期の難しい時期を過ごしました。そこにある美しい孤独を愛していました。心の傷が悲しみの詩に結晶する時のなんとも言えない快さを味わうことで、どのくらい慰められたでしょうか。その遠い日を今、思い出しています。

 人間の心に湧き上がる悲しみも喜びも、初めは言葉にならないのです。悲しみも喜びも言葉を得る時、そこに美しい結晶ができます。文学はこの結晶を楽しむ芸術です。

 喜びも悲しみも、時代によって装いを変えます。今、ここで生きる人にふさわしい装いをこらした作品が寄せられることを期待しています。それが、大正から昭和へかけて新しい詩をうたった室生犀星という詩人であり小説家であった作家を記念することになるでしょう。

(2014年8月7日 読売新聞)


第4回 室生犀星文学賞 作品募集

 読売新聞北陸支社は、金沢市生まれの詩人・小説家、室生犀星(1889〜1962年)の没後50年にあわせ、室生犀星文学賞を2011年度に金城学園(本部・金沢市)とともに創設しました。受賞者には正賞として九谷焼の文鎮と、賞金50万円を贈ります。

【応募作品】未発表の短編小説。テーマはなし。

【応募規定】■枚数は400字詰め原稿用紙50枚以内。ワープロ原稿の場合はA4サイズの用紙に縦書きで20字×20行で印刷すること。必ずページ数をふって、右肩を綴じてください。手書きも可。二重投稿はできません。 ■必ず表紙をつけてください。題名、氏名(筆名の場合は本名も)、ふりがな、住所、電話番号、職業、生年月日、性別、メールアドレスを表紙に明記してください。

【締め切り】2014年10月末 当日消印有効

【応募先】〒933−8543 富山県高岡市下関町4の5 読売新聞北陸支社「室生犀星文学賞係」(電話:0766-26-6825)

【選考委員】加賀 乙彦さん (小説家・精神科医)、中沢 けいさん (小説家)

【発表】2015年3月、読売新聞紙上で。全文は読売新聞石川版、富山版、ヨミウリオンライン「北陸発」に掲載します。

【その他】 受賞作品の著作権などは読売新聞社に帰属します。応募原稿は返却しません。選考に関する問い合わせには応じられません。

【主催】読売新聞北陸支社 【共催】金城学園 【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社 【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2014年5月21日 読売新聞)


室生犀星文学賞表彰式 安藤さん健筆の誓い

「文章大切に、書き続ける」

真鍋支社長(左)から賞状を受け取る安藤さん(26日)

 第3回室生犀星文学賞の表彰式が26日、金沢市の雨宝院で開かれた。幼なじみの女性の死を知った主人公の男性が、ともに過ごした当時の記憶をたどる短編小説「雪虫」で同賞に輝いた東京都八王子市の会社員安藤憲一さん(66)は「偉大な犀星の名を冠した賞をもらい、身が引き締まる思いです」と喜びをかみしめた。

 表彰式で読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長は「選考会では『今や60歳代は若手の作家だ』という話が出た。これからも健筆を振るって、素晴らしい作品を書き続けてください」とあいさつ。安藤さんに正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録を手渡した。

 安藤さんは中学時代、芥川龍之介の小説に出会って文学を志したが、社会人になってからは小説を書くことから遠ざかっていた。安藤さんはあいさつで、「仕事一筋だったので小説を書くのは四十数年ぶりだった。書いては消しの繰り返しだった」と執筆を振り返った。

 今回の「雪虫」は再び筆をとって2作目の作品。「自分の書いた作品がどの程度か分からず不安だった。受賞の知らせを聞いた時は、足元がふわふわとするような気持ちだった」という。「選考委員の方が『もっと書き続けなさい』という気持ちで与えてくださった賞だと思う。これからも文章を大切にして、書き続けていきたい」と思いを新たにしていた。

 金沢市を訪れたのは約30年ぶりといい、表彰式の前には兼六園や武家屋敷などを巡ったという。安藤さんは「ビルが立ち並びかつての景色とは違うけれど、相変わらず趣がある。素晴らしい土地ですね」と笑顔を浮かべていた。

■選考委員あいさつ

「読後に強い哀惜の念」小説家、精神科医 加賀乙彦さん

 「小説の良さは筋ではなくて、文体を主に独特の世界を描き出す独自性にある。犀星は晩年に新しい小説の世界を開いた。これまでの受賞者は独特の文体を持っており、今回の受賞作は哀惜の念のある強い読後感があった。抒情感のある作家が生まれてうれしい」

「60代で花 次回作期待」 室生犀星記念館名誉館長 室生洲々子さん

 「祖父は生涯、犀川と育った雨宝院を愛しており、そういった金沢の地で文学賞を作っていただき遺族として感謝している。祖父は晩年に花が咲いた作家で、70歳を前に読売文学賞を受賞した。安藤さんも60歳代ということで次回作も期待している」

(2014年3月27日 読売新聞)



(2014年3月23日 読売新聞 石川・富山版)

(2014年3月24日 読売新聞 石川・富山版)

受賞作のあらすじ

 靖男の元に、高校卒業四十周年を記念した同期会のアルバムと名簿が届く。名簿をめくり、幼なじみの中井千恵子が急死していたことを知る。靖男は幼い頃、北国の祖母宅に預けられたことがある。人見知りで家の中に引きこもる靖男にとって、近所に住む千恵子は唯一の遊び相手だった。高校も同じだったにもかかわらず、その存在を忘れていた靖男に対し、靖男のことを懐かしそうに同級生に語っていた千恵子。冬の到来を告げる「雪虫」にまつわる思い出が靖男の胸を締め付ける。




第3回室生犀星文学賞に安藤さん

 第3回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の受賞者が13日発表され、東京都八王子市の会社員安藤憲一さん(66)の小説「雪虫」に決まった。表彰式は26日、金沢市の雨宝院で行われる。

 受賞作は、幼なじみの女性の死を知った主人公の男性が、ともに過ごした当時の記憶や淡い恋心をたどる物語。安藤さんは「多方面で活躍した犀星の名を冠した賞をいただくことになり、とてもうれしい」と喜びを語った。

 同賞は室生犀星没後50年を記念し、読売新聞北陸支社が2011年度に創設。未発表の短編小説が対象で、正賞は九谷焼の文鎮、副賞は50万円。

(2014年3月14日 読売新聞 社会面)

幼なじみへの思い描く

第3回室生犀星文学賞 安藤さん「まだ夢見心地」

受賞が決まった安藤さん(東京都八王子市で)

 「今もまだ夢見心地」――。短編小説「雪虫」が第3回室生犀星文学賞を受賞した。作者の東京都八王子市の会社員、安藤憲一さん(66)は学生時代に諦めた文学の道をもう一度志し、幼なじみの女性との幼い頃の思い出が想起される作品で栄誉に輝いた。安藤さんに受賞の喜びを聞いた。(池田創)

 受賞作の「雪虫」は幼なじみの「千恵子」の急死を知った主人公が、千恵子との幼い頃の記憶を思いだす短編小説。安藤さんは「小さい頃の懐かしさと、初めて外界を意識するようになる子どもの心象風景を書きたかった」と執筆を振り返る。最終選考で選考委員の加賀乙彦さんは「明晰(めいせき)な良い文章で、地方の人の生活もしっかり写実されている。突然人が亡くなって、昔のことが語られる構成もバネがある」と評した。

 安藤さんは福島県生まれで、父親の転勤の関係で小学生から高校生にかけて、北海道富良野市で育った。「ものごころついた時から本を読むのが好きだった」という安藤さん。文学の世界にのめり込むきっかけとなったのは、中学校時代に出会った芥川龍之介の小説だ。「初めて読んだときのことは今でも覚えている。アクが強くて豪華絢爛(けんらん)な文章はまさに『大人の小説』でした」と当時の衝撃を振り返る。

 その後は芥川の「芋粥」などに代表される古典に取材した小説をまねして、歴史小説を書くなど執筆を開始。大学に進学後は芥川の研究に打ち込む一方、友人たちと小説や評論を掲載した同人雑誌を作る活動にものめり込んだ。大学2年時には文学雑誌の新人賞にも応募したが返事はなく、「自分には才能が無い」と諦め、次第に執筆からは遠のいたという。

 社会人になってからは仕事に追われる毎日。サラリーマンとして働き、帰宅も夜遅くなる日が続いたが、小説を読むことはやめなかった。

 仕事の一線を退いた60歳の時に行われた高校の同窓会で久しぶりに出会った友人から声をかけられた。「また小説書いてみろよ」

 久しぶりに筆をとったがなかなか言葉が出てこない。「書いては立ち止まることを繰り返しました」と振り返る。  「ストーリーよりも文体に興味がある」という安藤さんは何度も推敲(すいこう)を行う。「文体にこだわる性格はやはり芥川の影響かもしれない」とほほ笑む。

 今回の受賞作「雪虫」は自身の体験に基づく部分も多い。幼い頃に北海道で見た雪虫が、現在住んでいる八王子市でも見られることに数年前に気付き、着想を得たという。「今後は人間の持つ二面性にスポットを当てた小説を書きたい」と力を込めた。

 

     ◇

 表彰式は犀星の命日である26日に金沢市千日町の雨宝院で行われる。受賞作全文は後日、石川、富山県版とヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載される。表彰式は犀星の命日である26日に金沢市千日町の雨宝院で行われる。受賞作全文は後日、石川、富山県版とヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載される。

幅広い世代から力作

最終選考に臨む加賀さん(左)と室生さん(右)

  第3回室生犀星文学賞には、543編の応募があった。国内だけでなく、アメリカやイギリスなど国外4か国からも作品が寄せられ、13歳から93歳まで幅広い世代から力作が集まった。1次選考で57編に絞り込まれ、2次選考を経て最終選考には5編が残った。

 3日に東京・大手町の読売新聞東京本社新社屋で行われた最終選考では、真鍋和彦・北陸支社長が司会を務め、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの2人が審査を行った。

 選考会の冒頭、最終選考委員で昨年11月に亡くなった詩人で作家の辻井喬さんをしのび、真鍋支社長が「辻井先生は最終選考に参加することを楽しみにされていた。改めてご冥福をお祈りする」とあいさつ。加賀さんは「辻井さんは温厚な方だったが、詩にはものすごい迫力があった。語彙(ごい)の多い方だった」と故人をしのんだ。

 

受賞作のあらすじ 「雪虫」

 主人公・靖男の元に、都合がつかず出席できなかった高校の同期会記念アルバムと名簿が届く。名簿から、幼なじみの中井千恵子がくも膜下出血で急死していたことを知る。

 靖男は幼い頃に父が病にかかり、北国の祖母の元に預けられた。人見知りで家の中に引きこもる靖男にとって、近所に住む千恵子は唯一の遊び相手。千恵子は貧しく、殺風景な倉庫で暮らしていた。

 靖男の意識が現在と過去を行き交い、勝ち気な千恵子の思いがけない一面、そして冬の到来を告げる「雪虫」にまつわる思い出が丁寧に描写される。

待ち望んだ秀作

加賀乙彦さん

 今年の最終選考は、選者の一人辻井喬さんが昨年急逝されたので、室生洲々子さんと私の二人が当たった。当選作は、これまで女性ばかりだったので、男性の方の秀作がそろそろあってもいいという気持ちで、読み進み、安藤憲一さんの「雪虫」に出会ったときは嬉(うれ)しかった。

 事情によって高等学校のクラス会に出られない主人公に会の幹事から、卒後40周年の合同クラス会の写真と名簿が送られてきた。他のクラスの名簿を見ているうちに、中井という女性がくも膜下出血で逝去したと知った。

 主人公と彼女とは幼なじみであった。いじめっ子がくると、竹ぼうきで追い払ってくれた気の強さがあった。ある日、二人で川岸で木工場を見ていると、「雪虫が飛んでいるから、もうすぐ雪が降る」と彼女は喜んだ。雪に砂糖をかけて食べるという。

 山に木苺(きいちご)を取りにいった帰り、彼女が闇を怖がり、助けに行った彼に抱きついたことがあった。気は強いが、怖がりの少女の思い出が、クラス会の名簿の欠落から死を知り、はっきりと思い出されてくる過程が、よく描かれている秀作である。

切ない気持ち 淡々と

室生洲々子さん

 昨年11月に辻井喬先生が亡くなられ、加賀乙彦先生と私の二人の選考となりました。最終選考会では、加賀先生も私も「雪虫」を選んでいました。

 同窓会の名簿から幼なじみの死を知り、少女に対する気持ちを丁寧に書いた作品で、初恋を大事に思う男性の気持ちが表れています。誰もが経験する切ない気持ちを淡々と描き、読者に共感を与える作品だと思いました。

 2次選考では「左手の息子」「弟の家計簿」を推す意見が多かったのですが、文章のうまさ、全体的なまとまりから「雪虫」の受賞となりました。

 今年もほぼ昨年と同様の応募数でしたが、心に強く残る作品は少なく残念でした。犀星作品を意識して書かれている応募作が多かったようですが、意識することはないと思います。これからも多くの方々の応募を期待しています。

最終選考に残った作品とあらすじ

作品名 作者(住所) あらすじ
「弟の家計簿」
 高森美由紀(青森県)
主人公がある日、亡くなった弟が残した家計簿を見つけ、生前の姿を思い出す。標準語の中に方言をちりばめた。
「相馬坂」
 鈴木音依(東京都)
30歳代男性と70歳代女性の電車の中での偶然の出会い。そこから生まれるひとつの恋愛を描いた。
「朱夏金秋」
 美杉しげり (愛媛県)
家庭教師の主人公が15歳の少年に勉強を教えることになる。少年の抱く淡い恋心と少年の持つ「角(つの)」の秘密。
「左手の息子」
 平島摂子(広島県)
左手で書き続けたある画家の故郷を訪れる主人公。アトリエを探した末にたどりついたパン屋で、画家の知られざる過去に触れる。

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品、エムアンドケイ

(2014年3月14日 読売新聞)

犀星文学賞最終選考に5作品

最終候補について話し合う室生犀星文学賞2次選考委員(金沢市で)

  第3回室生犀星文学賞の2次選考会が金沢市内で開かれた。応募総数543点のうち、1次選考で絞り込まれた57点から、5点が最終選考に残った。

 2次選考は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さん、読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長が行った。選考会の冒頭、昨年11月に亡くなった詩人で作家の辻井喬さんをしのび、黙とうした。辻井さんは犀星文学賞の最終選考委員を務めていた。

 最終選考会は3月初めに予定している。最終選考委員は小説家で精神科医の加賀乙彦さん、室生さん。表彰式は犀星の命日である同月26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 同文学賞は、金沢生まれの犀星の没後50年を記念して読売新聞北陸支社が2011年度に創設した。短編小説が対象で、受賞作1点に正賞の九谷焼の文鎮と賞金50万円が贈られる。受賞作の全文は石川、富山県版とヨミウリ・オンライン「北陸発」で掲載する。

 最終候補は次の通り(敬称略)。

 「弟の家計簿」(青森県三戸町、高森美由紀)▽「相馬坂」(東京都新宿区、鈴木音依)▽「雪虫」(東京都八王子市、安藤憲一)▽「朱夏金秋」(松山市、美杉しげり)▽「左手の息子」(広島市西区、平島摂子)

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品、エムアンドケイ

(2014年1月28日 読売新聞)


第3回 室生犀星文学賞 1次通過57点

 第3回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の1次選考通過作品57点が決まった。今後、2次選考、最終選考を経て、受賞作の発表となる。

 1次選考を通過した作品名はヨミウリ・オンライン「北陸発」にも掲載する。2次選考会は来年1月下旬に実施する。委員は室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さんら4人。

 最終選考会は3月上旬に予定している。委員は小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん。

 表彰式は犀星の命日である3月26日、金沢市千日町の雨宝院で開催する 。

 1次選考通過作品は以下の通り(敬称略)。

※[都道府県]「作品名」 作者

[青森県]
  • 「弟の家計簿」高森 美由紀
  • 「機関区通り」中村 公子
[宮城県]
  • 「春を告げる花」上月 文青
[福島県]
  • 「過去とえくぼ」那音 優
  • 「脅え」たき ひでなが
  • 「悲しみの人」青岩 稜
  • 「にじゅうろく」江花 灯
[埼玉県]
  • 「血潮」福野 梟
  • 「皿洗い機」氷川 順
  • 「冬の影」星野 透
[千葉県]
  • 「浜蜻蛉」吉岡 昭
  • 「菩薩の目」島 政大
  • 「老いてゆく」島 政大
  • 「まゆみ」上田 真弓
  • 「闇の底から」七風 隼人
  • 「オレの女」江地東 千人
[東京都]
  • 「妻ごころ」三浦 喜代子
  • 「過去であると同時に未来でもある経験のために」
    よだか かずき
  • 「相馬坂」鈴木 音依
  • 「ごちゃっぺ」服部 正彦
  • 「荷造り」雛田 いい
  • 「夏に恋する女たち」大江 和希
  • 「紙一重」小糸 安伸
  • 「仄かな暗みに佇む」桜田 文
  • 「予見先見」陸 王
  • 「入り江」樋口 剛士
  • 「おわら恋歌、おんなの踊り」誉川 昭
  • 「雪虫」安藤 憲一
  • 「若葉の季節」村田 悦子
[神奈川]
  • 「戦の果て」九人 龍輔
  • 「ビールの味」小川 尚子
  • 「ゆめどの」轟ニルヴァ−ナ
  • 「真水と水と魚たち」中村 達哉
  • 「泥濘、抜け出す足」小見山 峻
[富山県]
  • 「締め切り」田村 章晃(富山市)
  • 「その色は似合わない」杉本 絵理
  • 「朝の祈り」石原 大三
[石川県]
  • 「残照」守屋 佳葉
  • 「網野草太郎フラグメンツ」松下 卓
  • 「丹後屋お絹」吉川 悠
  • 「さかな日和」王石 ゆらら
  • 「ある冬のこと」小林 明穂
[山梨県]
  • 「羅漢の夢」穐山 定文
[長野県]
  • 「わっしょい!」三井 多和
[滋賀県]
  • 「無花果」野元 ルビー
[大阪府]
  • 「ひまわりが咲かない夏やすみ」中島 春恵
  • 「庚申談義」小蛛@優斗
[兵庫県]
  • 「朱い風」岩井 延次郎
  • 「銀箔の上の世界」森 みずき
  • 「逆境の太陽」大谷 涼
  • 「花火の女」茉莉花 りん
  • 「記憶の箱」以川 行
[広島県]
  • 「左手の息子」平島 摂子
[愛媛県]
  • 「奇妙な依頼」小谷 正和
  • 「朱夏金秋」美杉 しげり
[熊本県]
  • 「鰻の花道」中田 由希子
[イギリス]
  • 「柿食えば」遊 子



犀星文学賞選考に尽力

辻井喬さんしのぶ声

第1回「室生犀星文学賞」の最終選考会議で話し合う辻井喬さん(中央)。右が加賀乙彦さん、左が室生洲々子さん(2012年3月9日、読売新聞東京本社で)

 肝不全のため25日に亡くなったセゾングループの創業者堤清二さん(86)は、詩人で作家の「辻井喬」としても活躍した。室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の選考委員を務め、関係者からは辻井さんの人柄をしのぶ声が相次いだ。

 共に同賞の選考委員を務め、20年以上の付き合いがある精神科医で小説家の加賀乙彦さんは28日、「温厚で謙虚な人柄。議論する人ではなく、和気あいあいと会合が進む。第1回の選考もそうだった」と振り返った。

 2004年から務める日中文化交流協会会長の経歴にも触れ、「中国側の話をよく聞き、刺激する発言はせず、日中の文化交流はここ数年非常にうまくいった。代わりになれる人はおらず、(文化交流に)暗い影が差すのではないかと心配している」と惜しんだ。

 辻井さんが同賞の選考委員を務めたのは、詩集「異邦人」で室生犀星詩人賞を受賞し、生前の犀星に会った縁があったこと。犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんは、「若々しく精力的に活動されていた。賞の選考では、時代に流されず、軸を持って選考された」と懐かしんだ。

 2012年に小説「二日月」で第1回の同賞に輝いた富山県砺波市、南綾子さん(74)は、表彰式の前に初めて対面した時、「なんて柔和で器の大きい方なんだろう」と感じた。南さんの緊張をほぐすように笑い話をしたといい、「知識を詰め込み無駄のないしっかりとした文章を書く方で、経営者でもあるので、格式高い人を想像していたら全く違った。こういう大人に一歩でも半歩でも近づけたらと思った」としのんだ。

 辻井さんは体調を崩し、今年の第2回の同賞には選考会、表彰式を欠席したが、第3回についても続投の意思を示していた。

(2013年11月29日 読売新聞)


人生経験映した543点

第3回室生犀星文学賞 応募総数

 目立つ60歳以上応募

室生犀星文学賞に寄せられた応募作品(読売新聞北陸支社で)

 第3回室生犀星文学賞は10月末で応募を締め切り、国内外から543点が集まった。応募者のうち60歳代以上が43%を占め、豊かな人生経験を反映させたとみられる作品が目立つ。

 応募者の内訳は男性65%、女性35%。都道府県別では東京都が18%と最も多く、次いで神奈川県、石川県の8%、埼玉県の7%と続いた。石川県は前回より12点多い42点、富山県は10点多い31点だった。国外はアメリカやイギリスなど4か国に住む日本人からの応募があった。

 年代別にみると、60歳代が26%、50歳代が20%、70歳代が15%と多かった。最高齢は93歳、最年少は13歳、いずれも女性だった。

 同文学賞は、室生犀星(1889〜1962年)の没後50年を記念して、読売新聞北陸支社が創設した。対象は短編の小説で、3次にわたる選考をへて受賞作1点に正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円が贈られる。1次選考通過作のタイトルと氏名、住所(都道府県まで)は、ヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載する。

 第3回の表彰式は来年、犀星の命日である3月26日に、金沢市の雨宝院で予定している。受賞作は読売新聞の石川、富山版と「北陸発」に掲載する。

 最終選考委員は詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの3人。

     ◇

 主催・読売新聞北陸支社▽共催・金城学園▽後援・石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社▽協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品、エムアンドケイ

(2013年11月21日 読売新聞)


受賞作を電子書籍化 犀星文学賞

電子書籍「風が動く街」の表紙

 第2回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)を受賞した小説「風が動く街」が2日、電子書籍として発売される。発行元は中央公論新社で、価格は100円(税別)。

 作者は、埼玉県越谷市在住の緋野由意子さん(64)。物語は、東京のリース会社に勤める30歳代前半の女性が主人公。千葉の実家から幼なじみの男性が病死したと知らされる。主人公は男性と数年間交際していたが、「他の女性と結婚する」と一方的に振られた過去がある。知らせを聞き、男性の実家を訪ねるという筋書きで、選考委員の加賀乙彦さんから「主人公の意識の流れの描写がうまい」と評価された。

 同書はウィンドウズパソコンやスマートフォン向けの電子書店「本よみうり堂デジタル」で購入できる。読売新聞社の会員サイトで、IDを登録してクレジットカードで決済する仕組み。

(2013年8月1日 読売新聞)


第3回室生犀星文学賞作品募集

 読売新聞北陸支社は、金沢市生まれの詩人・小説家、室生犀星(1889〜1962)の没後50年を記念し、文学賞を2011年度に金城学園とともに創設しました。受賞者には正賞として九谷焼の文鎮と賞金50万円を贈ります。

応募作品  未発表の短編小説。テーマは自由。

応募規定  ・枚数は400字詰め原稿用紙50枚以内。ワープロ原稿の場合はA4サイズの用紙に縦書きで20字×20行で印刷すること。必ずページ数をふって、右肩を綴じてください。手書きも可。二重投稿はできません。
 ・必ず表紙をつけてください。題名、氏名(筆名の場合は本名も)、ふりがな、住所、電話番号、職業、生年月日、性別、メールアドレスを表紙に明記してください。

選考委員 辻井喬氏(詩人・作家)、 加賀乙彦氏(小説家・精神科医)、 室生洲々子氏(室生犀星記念館名誉館長)

締め切り  10月31日(当日消印有効)

応募先  〒933・8543 富山県高岡市下関町4の5読売新聞北陸支社「室生犀星文学賞係」

結果発表  2014年3月、読売新聞紙上で。全文は読売新聞石川版、富山版、ヨミウリオンライン「北陸発」で掲載します。

その他  受賞作品の著作権などは読売新聞社に帰属します。応募原稿は返却しません。選考に関する問い合わせには応じられません。

【主催】読売新聞北陸支社  【共催】金城学園  【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社  【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋、内外薬品

(2013年5月2日 読売新聞)

読まれてこそ古典 ―文化部編集委員 鵜飼哲夫―

文化の薫り高い金沢の変貌

 加賀蒔絵(まきえ)や能楽の加賀宝生など伝統文化の薫り高い都市・金沢は、泉鏡花(1873〜1939)、室生犀星(1889〜1962)、徳田秋声(1871〜1943)という三人の文豪を生んだ街でもある。

 21世紀になる頃から街は変貌している。金沢市が事業主体となり、金沢三文豪の記念館が相次いでオープンした。城のある街の中心部には金沢21世紀美術館が開館、人の流れも大きく変わった。「ひがし」「主計町(かずえまち)」「にし」という三つの茶屋街の古い家並みも整備され、毎年多くの観光客が訪れている。しかし、街が整えられるに連れて、ほの暗い官能、ほの暗い情緒とでもいうべき、金沢の魅力が失われているように感じる。…全文を読む

(2013年4月9日 読売新聞)

金沢で室生犀星文学賞表彰式

 第2回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の表彰式が26日、金沢市の雨宝院で行われ、小説「風が動く街」で受賞した埼玉県越谷市の緋野由意子(ひの・ゆいこ)さん(64)(本名・鈴木喜美=きみ=)に正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録が読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長から手渡された。

 緋野さんは「立派な賞をいただきとても光栄です。犀星の(存在の)大きさに身を引き締めています」と話していた。

(2013年3月27日 読売新聞 社会面)

室生犀星文学賞表彰式「励みに書き続ける」

緋野さん「とても光栄」

読売新聞北陸支社の真鍋支社長(左)から表彰される緋野由意子さん=細野登撮影

 第2回室生犀星文学賞に輝いた埼玉県越谷市の緋野由意子さん(64)は、犀星ゆかりの雨宝院(金沢市千日町)で開かれた表彰式で、「日本の文学史の中でも大きな犀星という名前を冠した賞をいただき、とても光栄です」と喜びを語った。

 表彰式では読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長が「年を重ねられても文学への情熱を燃やし、花を咲かせた。これからも新たな作品にチャレンジして大きな花を咲かせてください」と祝福し、緋野さんに正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録を手渡した。

 「受賞の一報を聞いて、どんどん喜びがあふれてきた」とあいさつに立った緋野さんは受賞までの裏話を披露。パソコンの中には書き上げたまま、埋もれている作品がたくさんあり、受賞作の短編「風が動く街」もそうした作品で、かつ一番好きな作品だったという。「何とか日のあたる場所に出したい」という思いから犀星文学賞に出すことを決意した。

 「最初は70枚ぐらいの作品だったが、思いきって削って、50枚にした。途中で諦めなくて良かった」と振り返り、「今回の受賞を励みに、今後も書き続けていきたい」と満面の笑みを見せた。

 最終選考委員で作家の加賀乙彦さんや犀星の孫の室生洲々子さんら出席者から大きな拍手が起きた。

 受賞作「風が動く街」は都内の会社に勤める女性が亡くなった恋人の実家を訪ねる物語。全文はヨミウリオンライン「北陸発」のページで公開されている。

選考委員あいさつ

加賀乙彦さん「室生先生の詩に近い小説」

 「受賞作は謎解きの要素があり、ぼやっと書いて、謎めいた落とし穴がある。人物の関係や独特の文体などが厚みがあり、それらは短編作品では大事だ。室生先生の詩にはものすごい力があって、人を引きつけていた。それに近い小説が出てきてうれしい思いだ。これからもいい小説を書いてほしい」


室生洲々子さん「祖父に女性連続受賞報告」

 「24日に行った犀星忌で祖父に報告させていただいた。今回は日本だけではなく海外の幅広い年代からも応募があった。受賞作は想像力を働かせる作品だった。祖父は女性が好きで、昨年に続き女性が受賞し、祖父もあの世で喜んでいると思う」


(2013年3月27日 読売新聞)





(2013年3月20日 読売新聞 石川・富山版)
(2013年3月21日 読売新聞 石川・富山版)

受賞作のあらすじ

 4日間の有給休暇の最終日、東京都内のリース会社に勤務する「わたし」の自宅の電話が鳴った。千葉の実家からだった。2年前に別れた幼なじみの敏也が死んでしまった。心ここにあらずの「わたし」は週末、故郷に戻り、敏也の実家の前で敏也の母と偶然出会う。そして、敏也の母が二人の結婚に反対していたことを知る。



室生犀星文学賞に緋野さん

 第2回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の受賞者が13日発表され、埼玉県越谷市の緋野由意子(ひのゆいこ)さん(64)(本名・鈴木喜美〈きみ〉)の小説「風が動く街」が選ばれた。表彰式は26日、金沢市の雨宝院で行われる。

 受賞作は、別れた恋人の死を知らされた女性が、男性の実家を訪ねる物語。緋野さんは「文学史の中で大きな存在である犀星の名を冠した賞をいただくことになり、とてもうれしい」と話している。

 同賞は室生犀星没後50年を記念し、読売新聞北陸支社が昨年度創設した未発表の短編小説が対象の文学賞。正賞は九谷焼の文鎮、副賞は50万円。

(2013年3月14日 読売新聞 社会面)

第2回室生犀星文学賞 緋野さん、64歳で受賞

ぜい肉落とし 詩的に 

受賞した緋野さん(9日、埼玉県越谷市で)

 「いけるかなという気持ちと駄目かなという気持ちで半々だった」。孤独な女性が元恋人との関係をつづった短編小説「風が動く街」で、第2回室生犀星文学賞に輝いた埼玉県越谷市の緋野由意子さん(64)(本名・鈴木喜美)が、受賞の喜びと文章を書く楽しさを語った。

 受賞作「風が動く街」は現在と過去を行き交う、重層的な構造をした小説。隠された真実を探りながら読み進める推理小説の様な趣もある。緋野さんは「詩的な表現を残し、余分な“ぜい肉”をそぎ落とすのに苦労した」と振り返る。最終選考では選考委員の加賀乙彦さんから「ストーリーがうまくまとまっていて、意識の流れの描写がうまい。第2部も期待できる作品だ」と評価された。

 緋野さんは兵庫県明石市生まれ。幼い頃から読書に親しみ、大学では英米文学を学び、卒業論文は米国作家のナサニエル・ホーソンの代表作「緋文字」を論じた。これが長年使ってきたペンネームの由来だ。

 「読むばかりで、文章を書き始めたのは結婚して子どもができてからだった」という緋野さん。30歳代後半に「このまま子育てで時間が過ぎて、年をとってしまいたくない」と思い、埼玉県越谷市で行われた文章教室に参加。原稿用紙3枚程度のエッセーから始まり、40歳頃には新人賞に応募するようになった。「初めて出した文芸誌の新人賞で1次審査を通過して、書くのがやめられなくなった」と振り返る。

 今年1月の芥川賞で、黒田夏子さん(75)の史上最高齢受賞が話題となった。「黒田さんが頑張っているのを見て、勇気づけられた。いつかチャンスが巡ってくる。まだまだ大丈夫」と話し、「これからは自分と同じ世代の60歳代の女性を主人公に書いてみたい」と次回作の構想を明かした。

     ◇

 表彰式は犀星の命日の26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。受賞作全文は後日、富山、石川版とヨミウリ・オンライン「北陸発」に掲載される。

国内外から565編応募

最終選考に臨む加賀さん(右)と室生さん(中央左)ら

 今回の室生犀星文学賞には、565編の応募が寄せられた。国内に限らず、アイスランドなど4か国からも応募があり、16歳から88歳まで幅広い年代の力作が集まった。1次選考で68編に絞られ、2次選考を経て最終選考には5編が残った。

 8日に読売新聞東京本社で行われた最終選考では、真鍋和彦・北陸支社長が司会を務め、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの2人が審査を行った。選考委員の作家の辻井喬さんは体調不良のため欠席した。

受賞作のあらすじ 「風が動く街」

 主人公は東京のリース会社に勤める30歳代前半の女性。千葉の実家から幼なじみの男性が病死したという知らせが入る。主人公は男性と数年間交際していたが、男性から「実は他の女性と結婚する」と一方的に振られた過去を持っていた。

 知らせを聞いて、実家のある房総半島に戻る主人公。男性の実家でお焼香をあげ、男性の母親から「息子はあなたと結婚したいと言っていた。それを私が反対した」と告げられる。

 主人公が男性と結婚できなかった理由はなにか。過去と現在を行き来しながら、主人公の感情が丁寧に描写される。

優れた「ぼかし」の技術

加賀乙彦さん

 室生犀星文学賞も第2回になった。今年は選者の一人、辻井喬さんが欠席されたため、室生洲々子さんと私の2人の選考となった。私は「風が動く街」が一番いいと思って選考会に出席したのだが、室生さんも同じ作品を選んでおられた。

 主人公の若い女性の意中の人の病死で幕が開く。2人は小学校時代からの仲良しなのだが、2人の家庭、両親と子供の構成がよく似ている。作者はその家庭の秘密をぼんやりとした墨絵のように描いている。男の子の母と女の子の父との不倫のため、両方の家庭が病んでくる。男の子は恋人を持ち、子供をもったために、女の子から離れてしまう。男の子の父も家を出ていき、この家庭は崩壊する。このあたりのぼかしの技術がこの作者は優れている。

 今年は最終選考に残った五つの作品のうち四つが女性のものであった。女性の文運興隆はめでたい。

若々しさ年重ねても

室生洲々子さん

 選考委員会が無事に終わり、受賞作が決定してほっとしております。

 2次選考では、「彩時季」が秀作という意見が多かったのですが、加賀乙彦先生と意見が一致し、「風が動く街」が受賞作となりました。どちらの作品も女性が書き手です。受賞された緋野さんは年を重ねられてもなお、若々しい感性をもっておられる女性だと思いました。次回作も期待したいです。

 今年は565編と昨年より少なかったですが、すばらしい作品が多く、読み手として勉強になり、楽しく読ませていただきました。活字離れと言われていますが、作品の中から文学を愛する人たちの思いが感じられました。

 犀星の遺族として、文学賞に関係してくださった皆様に心からのお礼と感謝を申し上げます。

最終選考に残った作品とあらすじ

作品名 作者(住所) あらすじ
「狐の待つ対岸」
 湧永束 (長野市)
離婚を告げられた男性が日常を離れ、山登りに行くが、山中で遭難。その中で、ある若い女性との出会いを幻想的に描く。
「肉の蕾」
 牧野泰子(茨城県)
双子の子どもと友人の交友を通して、炭酸水やガラス玉などの印象的な表現をちりばめ、双子の葛藤を描いた。
「虚 栄」
 京一歩 (千葉県)
スーパーマーケットのアルバイト男性の何気ない日常。その中で仕事場でのお客との触れ合いから明日への希望を見いだす。
「彩時季」
 小川ままり(埼玉県)
幼い頃に父母を亡くした主人公。義母の葬儀に訪れた義父と主人公との奇妙な関係と感情をつづる。

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋

(2013年3月14日 読売新聞)

第2回室生犀星文学賞 最終選考進む5作品決定

金沢市内で行われた二次選考会

 第2回室生犀星文学賞の2次選考会が金沢市内で行われた。応募総数は565作品で、1次選考で絞り込まれた68作品から、5作品が最終選考に残った。

 2次選考は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さん、読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長が行った。

 最終選考会は3月上旬に予定している。最終選考委員は詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、室生洲々子さん。表彰式は犀星の命日である同月26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 同文学賞は金沢市生まれの犀星の没後50年を記念して読売新聞北陸支社が創設した。短編小説が対象で、受賞作1点に正賞の九谷焼の文鎮と賞金50万円が贈られる。受賞作の全文は石川、富山県版とヨミウリ・オンラインで掲載する。

 最終候補は次の通り(敬称略)。

 「狐の待つ対岸」(長野市、湧永束)▽「肉の蕾」(茨城県龍ヶ崎市、牧野泰子)▽「虚栄」(千葉県船橋市、京一歩)▽「風が動く街」(埼玉県越谷市、緋野由意子)▽「彩時季」(埼玉県草加市、小川ままり)

 【主催】読売新聞北陸支社【共催】金城学園【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋

(2013年1月29日 読売新聞)

第2回 室生犀星文学賞 1次選考通過作品一覧(68作品)

※「作品名」 作者(都道府県)


(敬称略)


犀星の手紙紹介 金沢で企画展

 金沢市千日町の室生犀星記念館で室生犀星(1889〜1962)の手紙を紹介する企画展「家族への手紙」が開かれている。

 展示では犀星が滞在先の軽井沢などから家族に宛てた手紙やはがきなど約90点を紹介。来年3月10日まで。入館料は一般300円、65歳以上200円、高校生以下無料。問い合わせは同館(076・245・1108)。

(2012年11月29日 読売新聞)

室生犀星文学賞応募565編 10〜60歳代 海外4か国からも

室生犀星文学賞に寄せられた応募作品(北陸支社で)

 第2回室生犀星文学賞の応募が締め切られ、565編が集まった。国内だけでなく、アイスランドなど4か国からも応募があった。

 応募者の内訳は男性62%、女性38%。都道府県別では東京都が19%と最も多く、次いで神奈川県の10%、埼玉県・千葉県の7%と続いた。石川県は30編、富山県は21編だった。

 年代別にみると、60歳代が24%、50歳代が18%と高く、最高齢は88歳、最年少は16歳の高校生だった。

 同文学賞は、室生犀星(1889年〜1962年)が没後50年を迎えるのを記念して、読売新聞北陸支社が創設した。対象は短編の小説で、受賞作1点に正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円が贈られる。

 第2回の表彰式は来年の命日である3月26日、金沢市の雨宝院で予定している。受賞作は読売新聞の石川、富山版とホームページに掲載する。

 最終選考委員は詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの3人。

 主催・読売新聞北陸支社▽共催・金城学園▽後援・石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社▽協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋

(2012年11月22日 読売新聞)

小説家犀星の誕生展 金沢で

 室生犀星記念館(金沢市千日町)で、開館10周年と犀星没後50周年を記念した企画展「小説家犀星の誕生―瀧田樗陰コレクションから―」が開かれている。11月18日まで。

 室生犀星(1889〜1962年)は「抒情小曲集」などで詩人としての地位を確立した後、「中央公論」の編集長だった瀧田樗陰(1882〜1925年)の目にとまり、1919年に「幼年時代」で小説家デビューを果たす。展示では作家と編集者である2人の関係を示す直筆原稿や書簡など約60点を紹介している。

 中でも県内初公開となる「性に眼覚める頃」の直筆原稿では、元の題名案「発生時代」から「性に眼覚める頃」に書き直した紙が貼られており、これは樗陰の提案によるものだった。後に犀星は自伝「弄獅子」で「瀧田氏は自身で『性に眼覚める頃』と題を改めた上、こういう題名は人の注意を惹くからともいうのであった」と回想している。

 この他にも犀星没後50周年を記念した企画展が、田端文士村記念館(東京都北区)、軽井沢高原文庫(長野県軽井沢町)など全国の文学館で開かれている。

(2012年10月26日 読売新聞)

辻井喬さん犀星を語る

犀星について語る辻井喬さん(10日、東京・千代田区で)

 室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社、金城学園共催)の最終選考委員を務める作家の辻井喬さんの講演会が10日、東京・千代田区の内幸町ホールで開かれ、約100人を前に、犀星について語った。

 辻井さんは「自分の感じたことを素直に作品にしている。人生に対して、はすに構えていない」と犀星の作品の特長と魅力を紹介した。自身が室生犀星詩人賞を富岡多恵子さんと共に受賞した際、賞金が半分になったと富岡さんに言われ、謝った裏話なども披露した。

 後半は室生犀星学会理事の大森盛和さんと対談し、犀星の女性へのあこがれなどについて語り合った。講演会は、よみうりカルチャーと読売新聞北陸支社が共催した。

 講演を聞いた千葉県野田市、添野博さん(77)は「犀星をよく知る人は、人生をよく知ることになるという話が印象的でした」と話していた。

(2012年10月11日 読売新聞)

企画展「杏っ子その生涯」 室生犀星記念館

父・犀星の紹介に心血

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朝子さんがモデルになった「杏っ子」

 室生犀星の小説「杏っ子」のモデルにもなった長女でエッセイストの室生朝子(故人)を特集した企画展「杏っ子 その生涯」が、金沢市千日町の室生犀星記念館で開かれている。

 8月で開館10周年を迎える同館の開館に尽力し、心待ちにしながらも直前に亡くなった彼女を偲(しの)ぼうと企画された。

 朝子は1923年に生まれ、父・犀星の傍らで生活を見守り続けた。「君はいずれ何時か、わしのことを書かねばなるまい。君にあげる何よりも、大きい遺産になるね」という言葉を掛けられていた朝子。その言葉通り、62年の犀星没後に文筆活動を本格的に始め、娘の視点で犀星を描いた「父室生犀星」など数多くの著作を残した。

 犀星の業績を世に伝えることに心血を注いだ。犀星を研究する上で欠かすことのできない、作品を年代順に並べた「室生犀星文学年譜」と、全ての著書の書誌情報や収録作品の初出誌が記録された「室生犀星書目集成」は、朝子の地道な調査によって編集された。全国の文学館や図書館、新聞社などに自ら足を運び、約7000点もの作品を集めて一つひとつのデータを並べ、全集の刊行にも役立てたという。

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(上)朝子さんが父・犀星についてつづった書籍(下)展示されている「室生犀星文学賞」の正賞の文鎮

 釣りや料理など趣味にも生き、エッセー「鯛(たい)の鯛」や、講演などで各地を訪ね歩くうちに興味を持った石仏や古寺、名所を取り上げた「私の釣りの旅」などを著した。

 今回の企画展では、これらの著作や原稿、犀星と朝子の間でやりとりされた手紙などを見ることができる。

 また同館1階では現在、昨年度、第1回目が行われた「室生犀星文学賞」(読売新聞北陸支社主催)の正賞として贈られた九谷焼の文鎮「川蝉(かわせみ)」が展示されている。

 10月14日まで。会期中無休。午前9時半〜午後5時。一般300円(20人以上の団体は250円)、65歳以上200円、高校生以下無料。問い合わせは同館(076・245・1108)。

(2012年7月24日 読売新聞)

犀星文学賞小説 オンラインで発売

 第1回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)を受賞した小説「二日月」=写真=が29日、電子書籍としてオンライン書店「本よみうり堂デジタル」で発売される。価格は100円(税別)。発行元は中央公論新社で、「中公100円eブックス」シリーズの1冊。

 「二日月」は、富山県砺波市在住の南綾子さん(72)の作品。主人公は東京に住む料亭のおかみ。高校の恩師の米寿を祝う会に出席するため、四十数年ぶりに北陸を訪れ、高校生3人だけで寺で過ごした当時を思い出す。思春期の揺れ動く心理が描かれ、選考委員の加賀乙彦さんから「不思議な吸引力がある」と評価された。

 「本よみうり堂デジタル」は読売新聞社の会員サイトで、IDを登録してから利用できる。現在対応しているのは、ウィンドウズ・パソコンと米・グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を搭載したスマートフォン。クレジットカードで決済する。読売新聞の連載をまとめたオリジナル電子書籍や、中央公論新社など主要出版社の文芸、実用書など約4万点を集めている。

(2012年6月29日 読売新聞)



犀星文学賞の文鎮 金沢市に

山野市長(右)に文鎮を手渡す(左から)真鍋支社長、武腰さん、加藤副理事長

 室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)の第1回受賞者・南綾子さん(富山県砺波市)に贈られた正賞と同じ文鎮が25日、金沢市に寄贈された。

 文鎮は九谷焼作家の武腰潤さんが製作したもので、表面につがいのカワセミが色鮮やかに描かれている。

 この日は市役所で、武腰さんや金城学園の加藤真一副理事長が同席し、読売新聞北陸支社の真鍋和彦支社長が山野之義市長に文鎮を手渡した。山野市長は「文学賞をきっかけに、(市内の)室生犀星記念館にも多くの人に来てもらいたい」と話した。

 同文学賞は金沢市生まれの室生犀星(1889〜1962)が今年没後50年となるのを記念し、北陸支社が創設。第1回募集では国内外から925編の作品が寄せられた。現在、第2回の募集が行われている。

(2012年6月26日 読売新聞)

犀星と芥川 熱い友情 署名本2冊 初の展示

芥川が犀星に贈った記念館で展示中の「支那游記」。右側に犀星の署名が記されている(県立図書館蔵)

◆芥川が贈った「支那游記」「湖南の扇」 

 室生犀星記念館(金沢市千日町)で芥川龍之介(1892〜1927年)から室生犀星に宛てた署名本が公開されている。2人の交友を示す数少ない資料で、芥川生誕120年、犀星没後50年を記念し、同館では初の展示となった。

 ■図書館に寄贈

 芥川は犀星より3歳年下だが、犀星が第一詩集「愛の詩集」を発表するより早く、「羅生門」(1915年)、「鼻」(16年)などで新進気鋭の作家として注目を浴びていた。18年1月にある会合で言葉を交わして以来、2人の交流が始まった。24年8月には軽井沢で同じ旅館に宿泊するなど友情を深め、執筆の面でも古典に取材した芥川の作風が、犀星に影響を与えている。

 27年7月24日に芥川が自殺すると、犀星はすぐにしのぶ文章を執筆し、同27日には「読売新聞」に掲載された。芥川賞が35年に創設されると選考委員となり、42年まで務めた。

 今回の展示では芥川が犀星に贈った署名入りの著書「支那游記」「湖南の扇」の2冊が展示されている。犀星は32年に金沢から東京に転居したが、その際に蔵書のほとんどを古書店に売り払ったり、知人に譲ったりしていた。この2冊のサイン本は、県立図書館に寄贈された数少ない蔵書で、裏表紙には犀星の署名で「図書館に献ず 犀」と記されている。

 ■7月上旬まで

 同館の嶋田亜砂子学芸員は「2人の友情とともに、犀星が芥川を後世に残すべき作家だと強く思っていたことがうかがえる」と話している。

 展示は7月上旬までの予定。芥川から犀星に宛てた書簡なども展示している。

 入館料は一般300円、65歳以上200円、高校生以下無料。問い合わせは同館(076・245・1108)まで。

(2012年5月14日 読売新聞)



第2回室生犀星文学賞 作品募集 =終了=

 金沢市生まれの詩人・小説家、室生犀星の没後50年を記念して、読売新聞北陸支社が創設した文学賞。今月から、第2回の作品を募集します。受賞作1点に正賞の九谷焼文鎮と賞金50万円を贈ります。

応募規定 対象は未発表の短編小説。テーマは自由。今回から随筆は募集しません。縦書きにしてA4判20字×20行で50枚以内。手書きも可。二重投稿はできません。受賞作品の著作権、出版権などは主催者に帰属。応募作品は返却しません。
必ず表紙をつけてください。題名、氏名(筆名の場合は本名も)、ふりがな、住所、電話番号、職業、生年月日、性別、メールアドレスを表紙に明記してください。
選考委員 作家の辻井喬、加賀乙彦の各氏と、室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子氏
締め切り 10月31日(当日消印有効)
応募先 〒933・8543 富山県高岡市下関町4の5 読売新聞北陸支社室生犀星文学賞係。
結果発表 2013年3月、読売新聞紙上で。全文は石川版、富山版で掲載します。

 【主催】読売新聞北陸支社  【共催】金城学園 【後援】石川県、金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、報知新聞社 【協賛】北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット、福光屋

(2012年5月2日 読売新聞)



没後50年 犀星リバイバル

復刊、映像化、文学賞…

 「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」などの詩が今も愛唱される詩人で小説家の室生犀星(1889〜1962)が今年没後50年となり、注目されている。

 不義の子に生まれ、生後すぐ生母と生き別れた犀星は、恵まれない女性、小動物など弱きものに視座を向けた文学をつくった。戦後、文壇から遠ざかったが1955年、『随筆女ひと』がベストセラーになり、復活する。金沢市の室生犀星記念館で開催中の企画展「終の輝き〜われはうたへども」(6月17日まで)は、読売文学賞を受けた『杏(あんず)っ子』、『我が愛する詩人の伝記』を中心に、晩年の活躍と終焉(しゅうえん)を紹介する。『随筆女ひと』の生原稿には、「女記」「閃めく人」「えもいわれざる」「閃めく女びと」「最初の最後の人」など題名が何度も書いては消され、「女ひと」に決まる経緯がわかる。「楽なものは一枚でも書いてはならぬ」と自戒していた作家の姿勢が強烈に伝わる。

 51回目の命日に当たる3月26日には、犀星文学アルバム『切なき思ひを愛す』(菁柿堂(せいしどう))=写真=が発行され、第1回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催)の表彰式が、犀星の育った金沢市の犀川べりの雨宝院で行われた。作家の知名度もあり、全国から925編が集まった。

 これまであまり光の当たらなかった作品の復刊や映像化も近年の傾向だ。老作家と女性編集者の交流を描く犀星原作の「火の魚」が3年前、テレビドラマ化された。実体験をもとに、早世した愛児との死後の交流を描く「童子」「後の日の童子」は4年前、ちくま文庫『室生犀星集 童子――文豪怪談傑作選』に収録され、これも「後の日」としてドラマ化された。

 犀星は芥川龍之介と親交が深く、関東大震災の体験記を残す時代の証言者でもあった。この側面を伝える作品集『深夜の人・結婚者の手記』(講談社文芸文庫)も最近出版された。

 金沢市内の講演会で3月25日、歌人の岡野弘彦さんは、師の折口信夫と親交のあった犀星の思い出を語った。「口数は少なく、ちょっととっつきにくかったけれど、言葉と言葉がぴたっと重なり合っていて、無駄な言葉、お世辞の言葉は使わず、納得のいく言葉を話す人だった」。自ら「悪文」というやや武骨な文章ではあるが、そこに屈折した叙情性があふれるのが犀星文学である。それが年月を経ても忘れられないほどの印象を残し、リバイバルの背景ともなっている。(文化部 鵜飼哲夫)

(2012年4月3日 読売新聞)



室生犀星文学賞 雨宝院で表彰式

 第1回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催)の表彰式が26日、金沢市の雨宝院で行われ、小説「二日月(ふつかづき)」で受賞した富山県砺波(となみ)市の南綾子さん(72)に、正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録が読売新聞北陸支社の中川俊哉支社長から手渡された。南さんは「愛着ある作品が受賞できて光栄です」と語った。

(2012年3月27日 読売新聞)



「愛着ある作品うれしい」 犀星文学賞表彰式 南さん次回作に意欲も

中川俊哉北陸支社長(左)から表彰される南綾子さん(26日、金沢市千日町の雨宝院で)=細野登撮影

 第1回室生犀星文学賞に輝いた砺波市の南綾子さん(72)は、金沢市千日町の雨宝院で開かれた表彰式で、「愛着がある作品にお褒めの言葉をいただき、とてもうれしい」と喜びを語った。26日は犀星の命日。会場には、犀星ファンや関係者ら約70人が集まり、最終選考委員の講評や南さんのあいさつに聞き入った。

 表彰式では、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんが「命日に祖父が育った雨宝院で表彰式が開かれたことを、祖父も母も野田山(墓地)で喜んでいると思います」と述べた。その後、読売新聞北陸支社の中川俊哉支社長が、正賞の九谷焼の文鎮と副賞50万円の目録を南さんに手渡した。

 南さんはあいさつで、「(3月15日付本紙朝刊で)最終選考委員の方々の講評を読み、体全体を走り抜けた驚きと震えは、しばらく抑えることが出来なかった」と振り返り、時間の経過とともに喜びや感謝、戸惑いなどの感情がわき起こったことを披露。そのうえで、「お褒めの言葉を汚さぬように一歩一歩、歩んでいきたい」と次回作への意欲を示した。

 高校生の頃から犀星ファンという金沢市御影町、自営業野村芳子さん(65)は「受賞作はお寺が舞台で犀星の作品と重なる。構成やストーリーの巧みさに驚いた」と絶賛。半世紀近く犀星を愛読しているという金沢市増泉、自営業八幡雄一郎さん(73)は「犀星の名を冠した賞をどんな人が受賞したか関心があり、会場に来ました。受賞作をぜひ読んでみたい」と話していた。

 主催・読売新聞北陸支社、共催・金城学園、後援・金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット

(2012年3月27日 読売新聞)



選考委員が見た犀星賞

室生犀星が幼少期を過ごした雨宝院

 表彰式では、選考委員が犀星に対する思いや、受賞作の印象を語り、第1回室生犀星文学賞を振り返った。

 室生犀星文学賞は、金沢市生まれの詩人・小説家、室生犀星(1889〜1962年)が26日に没後50年を迎えるのに合わせ、読売新聞北陸支社が発刊50周年を記念して創設した。第1回は、海外からの作品も含め925編が集まった。

 表彰式が行われた雨宝院には、犀星ゆかりのものが多く残され、幼い犀星が見た風景を通して作品世界に浸ることができる。


先生との出会い思い出す…辻井喬さん

辻井喬さん

 生まれて初めてもらった賞が、「室生犀星詩人賞」(1960年から7回開催)だった。第2回の受賞なので、おそらく生前の犀星先生(62年に死去)に会った最後の文学関係者かなと思う。授賞式が行われた銀座の中華第一樓に緊張して参ったのを今でも思い出す。南さんのあいさつを見て、私もああいう風だったのかな、と懐かしい思いがした。

 南さんの作品は、構成といい、登場する人物の存在感といい、無理がなく自然に書かれており、将来に展望が開けるものだった。最後に残った7編のうちの3編ほどは、どの作品にしてもいいのではないかと大変迷ったが、加賀さんが推されて「二日月」に決まった。

 犀星先生は「大きな作家」「天性の作家」というべき才能を生まれながらに持っていた。犀星先生とも金沢ともご縁が深くなり、幸せなことだと喜んでいる。 (作家)


年配の方の作品目立った…加賀乙彦さん

加賀乙彦さん

 受賞作は過去の思い出が現在と重なる不思議な構成を持っており、展開が意外な方向に向かっていく。文章が非常に素直で、しかし謎めいた雰囲気をうまく表現している。読んだときに、とっくに作家として世に出ている人の小説じゃないかと思うほどだった。

 最終選考には50代以上の方の作品が目立ったが、今の文学の世界では、若い人が作家を目指して書いている場合と、年配の方が自分の暇を文学の方に集中して、いい小説が出てくる場合と二極化している。

 若い人の小説はありえない出来事を描くファンタジーのような作品が多いが、年配の方の小説は、自分の過去を振り返るような形の小説が見られる。その振り返り方は人によって異なるが、受賞作は格調高い文章と過去をよみがえらせる手法を用いており、象徴的な二日月が出てくるラストシーンが見事だった。(作家)


祖父の文学賞続くこと願う…室生洲々子さん

室生洲々子さん

 祖父は野間文芸賞を受賞したときに賞金の一部を使い、自身で「室生犀星詩人賞」を創設したことがある。選考はほとんど一人で気ままにやっていた。

 「生涯で室生犀星詩人賞を設ける空想が実現され、はなはだ本望であった」という文章も残している。第2回までは祖父が存命であり、その後は母が受け継ぎ、第7回まで続いた。その後、新しく賞を作る話をいただいたこともあるが、なかなか実現することができなかった。今回新しく祖父の文学賞が創設され、遺族としてうれしく思っている。

 あとで知ったことだが、受賞者の南さんは室生家とも縁があり、大変驚いている。創設したときに500〜600編ほど応募があればと話していたが、ふたを開けたら925編、うれしい悲鳴をあげた。まだまだ始まったばかりで、これからも続くことを願っている。(室生犀星記念館名誉館長)


応募925編賞へ期待の表れ…小林弘子さん

小林弘子さん

 925編という数字は、何よりも文学を愛好する全国の人たちが期待していることの表れだ。2次選考では、緊張しながら応募作品に臨んだ。犀星の作品は社会的に弱い人の不条理への反発を描いた点、魚や虫など小さな生き物をモチーフにしている点が特徴的。初めて受賞作「二日月」を読んだとき、文章に破綻が無く、書き慣れている印象を受けた。

 受賞作の舞台がお寺であることから、雨宝院を舞台にした犀星の小説「性に眼覚める頃」を思い出した。犀星という名を冠している文学賞だったので、「二日月」の内容は犀星の文学をしっかり読んで理解しているという印象を受け、最終選考に送った。

 ラストのシーンで月が登場し、題名「二日月」の付け方がうまいと思った。南さんはもちろんだが、落選した他の6人の方々の健筆を願っている。(室生犀星研究会会員、2次選考委員)


 主催・読売新聞北陸支社、共催・金城学園、後援・金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット

(2012年3月27日 読売新聞)



 


室生犀星文学賞に南さん

 第1回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催)は14日、富山県砺波市、無職南綾子さん(72)の小説「二日月(ふつかづき)」に決まった。表彰式は26日、金沢市の雨宝院で行われる。受賞作は、東京に住む料亭のおかみが主人公。高校の恩師の米寿を祝う会に出席するため、四十数年ぶりに北陸を訪れる。高校生3人だけで寺で過ごした当時を思い出し、思春期の揺れ動く心理が描かれている。

 選考委員は、詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん。受賞作は「不思議な吸引力があり、リアリティーが割合保たれている」と評価された。南さんは「信じられない。気を引き締めて次作に取り組みたい」と語った。

 同賞は短編小説と随筆が対象。金沢市生まれの犀星が今年、没後50年となるのを記念して読売新聞北陸支社が創設した。正賞は九谷焼の文鎮。副賞50万円。

(2012年3月15日 読売新聞)



思春期の揺らぎに焦点 犀星文学賞 南さんの「二日月」

受賞「青天の霹靂だった」

室生犀星文学賞に輝いた南綾子さん(10日、砺波市で)=細野登撮影

 「大人になると忘れられがちな、子どもから大人に移行する過程の心の揺らぎを描きたかった」。思春期の揺れ動く心理を描写した小説「二日月」で、第1回室生犀星文学賞(読売新聞北陸支社主催、金城学園共催)に輝いた砺波市、南綾子さん(72)が、受賞の喜びと作品に込めた思いを語った。表彰式は犀星の命日の26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 受賞作は、東京に住む主人公・日名子のもとに高校時代の恩師の米寿を祝うクラス会の案内が届いたことをきっかけに、四十数年ぶりに北陸を訪れ、思春期の苦い記憶を思い出していく物語。母親に反発した日名子は家出をして、寺で姉と弟だけで暮らすきょうだいのもとに転がり込む。弟は無邪気に振る舞う日名子に抑えきれない衝動を抱くが、日名子はそれに気づかず、苦しめてしまったことを悔やむ様が描かれる。

 南さんも主人公と同じ多感な時期を寺で暮らしたことがあり、その体験と犀星の「性に眼覚める頃」が重なり、物語を膨らませた。「現代ではそんな揺らぎの過程を経ずに、一足飛びに大人になってしまう。時間や物事の流れがあまりにも速く、大事なものを失っているのではないか」との思いを込めた。

 受賞は「青天の霹靂だった」と語る南さん。幼少時代から図書館に通い、ドストエフスキーやツルゲーネフの作品を読みあさった。高校卒業後、東京で過ごしたOL時代は演劇学校にも通った。

 小説を書き始めたのは約20年前。子育てが落ち着き、元新聞記者が主宰する文章教室に通ったことがきっかけだ。教室の生徒たちが寄せる同人誌には毎年作品を発表している。地元紙や文芸雑誌の文学賞に応募し、受賞したこともある。

 南さんは全国の展覧会に足を運んだり、古典の勉強会に通ったりと趣味は多岐にわたる。受賞作ではパリで活躍した画家モディリアーニ(1884〜1920年)の絵が登場しており、こうした趣味は作品に生かされているという。

 現在は、次の作品を執筆中で、東京で暮らしていた頃に出会った女性ホームレスが、その後どうなったのか、思いを巡らせながら筆を走らせている。

       ◇

 全文は後日、石川、富山版とヨミウリ・オンライン「北陸発」で紹介します。

最終7編 3氏が審査

最終選考会議で話し合う(右から)加賀乙彦さん、辻井喬さん、室生洲々子さん(9日、本社で)

 第1回室生犀星文学賞には、佐賀県を除く46都道府県から925編の応募が寄せられた。米国やフランスなど5か国に住む日本人からも応募があった。1次選考で95編に絞られ、2次選考を経て最終選考には7編が残った。

 9日に読売新聞東京本社で行われた最終選考では、中川俊哉・北陸支社長が司会を務め、詩人で作家の辻井喬さん、精神科医で小説家の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの3人が審査に携わった。


最終選考に残った作品とあらすじ

作品名 あらすじ
「島へ帰る日」
(千葉市中央区、大野俊郎)
鹿児島の沖永良部島に住んでいた祖母の葬儀のために帰郷した男性が、葬儀で出会った見知らぬ男性の死を通して祖母の思いを推し量る。
「スーパーアリーナの太陽」
(さいたま市大宮区、氷川順)
福島県の海で東日本大震災に遭った19歳の漁師が、避難所を転々とし、避難先となった施設のあるさいたま市での生活をつづる。
「帰郷」
(東京都国立市、眞邉カンヌ)
都内で知り合った「婆さん」とともに、若い男性が東日本大震災の被災地をドライブする。二人はお互いの過去を吐露しあう。
「父の海」
(富山県射水市、放生清華)
富山湾沿いの漁師町で育った男性が母の法事のために久しぶりに帰郷し、漁師だった父が遭難したときを思い出し、父ゆかりの人を訪ね歩く。
「幻月」
(茨城県笠間市、小沢真理子)
地方都市の医院に勤務する女性が俳句を通して院長に親近感を抱くが、別の人と見合い結婚し、離婚した半生を振り返る。
「箱庭のゆめ」
(金沢市、王石ゆらら)
北国で暮らす高齢女性が、茶棚の奥から菓子の缶を見つけ、中から親指ほどの箱庭師が出てくる。季節ごとに女性の好きな風景が現れていく。

将来性織り込み選考…辻井 喬さん

 最後に残った七つの作品の中から受賞作を選ぶ作業はかなり難しかった。

 その背後にはわが国の近現代文学史に燦として輝く室生犀星の名を冠する文学賞だから、それにふさわしい作品を選ばなければという気持ちがあった。

 しかし、7作品とも短編としての文学的テーマがはっきりしているようには思えなかった。そこで基準を変えて、将来性という観点を導入することにした。

 すると、南綾子、王石ゆらら、大野俊郎、小沢真理子の諸氏の作品が浮かんできた。『二日月』は最初から加賀乙彦さんが押していた作品だった。

 もう一度、7作品の中で、どれが、登場人物の姿や形、作品の筋道がはっきりしているかを考えると、この南さんと王石さんの作品になった。王石さんの場合、犀星の幻想的な作品『蜜のあはれ』を想起させることがかえって不利になって、結果として受賞作は南綾子さんの『二日月』になった。


読後感鮮明な「二日月」…加賀乙彦さん

 神楽坂の古い料亭の女将をしている日名子のもとに、突然、北陸のT高校からクラス会の通知が来る。5歳から12年間、その地に母と住んだ。高校3年の卒業近い冬に、母はとつぜん日名子を連れて東京に来て父の名字に改姓させる。父母が死んだあとも料亭を続け、すっかり北陸の高校のことなど忘れていた。

 北陸に着くと、古い寺に住む友人とその弟、住職になった渓真との淡い恋愛を追憶するが、その男はその後結婚し、自殺して一冊のスケッチブックを残していた。日名子は幼くて男の求愛の心を見逃して東京に来てしまった。この過去の描写が簡潔だが、くっきりと書かれていて読後感も鮮明である。男の姉が日名子の同級生だが、彼女の強い性格も見事に書かれている。ふと男が新月のあとの二日月の刃物のような鋭い形に言及した思い出が、短編の締めとして、鋭く胸を突く。主人公の周囲の人物、両親も鮮明な印象を残していて、この作品を奥行深いものに仕上げている。


賞の創設 孫として感謝…室生洲々子さん

 最終選考委員の一人、室生洲々子さんは今回の文学賞について、「このような賞を作っていただき、遺族としてたいへん感謝しています。11歳から92歳まで幅広い年齢層の多くの方々が自分を表現したいと思っていることに驚きました。選考作業は読み手として楽しく、勉強にもなりました。文学賞をきっかけに、犀星の作品に触れていただければ、うれしいです」と述べた。


 主催・読売新聞北陸支社、共催・金城学園、後援・金沢市、テレビ金沢、中央公論新社、協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット


(2012年3月15日 読売新聞)



最終選考に7編 命日の来月26日表彰式

応募作品を審査する2次選考委員(金沢市内で)

 室生犀星文学賞の2次選考会議が金沢市内であった。応募総数は925編で、1次選考で絞り込まれた95編から、7編が最終選考に残った。

 2次選考は、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん、室生犀星研究会会員の小林弘子さん、森山啓文学賞選考委員の森松和風さん、読売新聞北陸支社の中川俊哉支社長が行った。

 同文学賞は今年3月に、金沢市生まれの犀星が没後50年を迎えることから、読売新聞北陸支社が発刊50周年を記念して創設した。

 最終選考は3月上旬に予定している。受賞作の全文は石川、富山県版とヨミウリ・オンライン(YOL)で掲載する。最終選考委員は詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、室生洲々子さん。表彰式は犀星の命日である3月26日、金沢市千日町の雨宝院で行われる。

 最終候補は次の通り(敬称略)。

 「島へ帰る日」(千葉市中央区、大野俊郎)▽「スーパーアリーナの太陽」(さいたま市大宮区、氷川順)▽「帰郷」(東京都国立市、眞邉カンヌ)▽「二日月」(富山県砺波市、南綾子)▽「父の海」(富山県射水市、放生清華)▽「幻月」(茨城県笠間市、小沢真理子)▽「箱庭のゆめ」(金沢市、王石ゆらら)

  主催・読売新聞北陸支社
  共催・金城学園
  後援・金沢市、テレビ金沢、中央公論新社
  協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット

(2012年2月4日 読売新聞)



第1回 室生犀星文学賞 1次選考作品一覧(95作品)

※「作品名」作者(都道府県) [☆=本賞、◎=最終選考に残った作品]

(敬称略)




室生犀星文学賞 応募925編

米仏など海外からも

全国から寄せられた室生犀星文学賞への応募作品(北陸支社で)

 金沢市出身の詩人・小説家の名前を冠した第1回室生犀星文学賞の応募が締め切られ、925編が寄せられた。国内だけでなく、米国やフランスなど5か国に住む日本人からも応募があった。

  内訳は男性58%、女性42%。都道府県別では東京都が20%と最も多く、次いで神奈川県の9%、埼玉県の8%と続く。地元の富山県からは52編、石川県からは48編が送付された。応募がなかったのは佐賀県だけだった。

  年代別でみると、60歳台の22%、50歳台の21%が目立った。最高齢は92歳、最年少は11歳が2人いた。

  室生犀星文学賞は2012年3月、犀星が没後50年を迎えるのを前に読売新聞北陸支社が創設した。

  最終選考委員は詩人で作家の辻井喬さん、小説家で精神科医の加賀乙彦さん、犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんの3人。

  表彰式は犀星の命日である2012年3月26日、金沢市の雨宝院で予定している。受賞作1点に賞金50万円が贈られる。

  受賞作は読売新聞の北陸版とホームページで掲載する。

  主催・読売新聞北陸支社
  共催・金城学園
  後援・金沢市、テレビ金沢、中央公論新社
  協賛・北陸カード、玉田工業、JR西日本、モバイルコムネット

2012年1月17日 読売新聞)


室生犀星文学賞 辻井喬さんら選考委員決定(2011/7/8読売文化面掲載記事)

 読売新聞北陸支社が創設した「室生犀星文学賞」の最終選考委員3人が決まった。

 同文学賞は、金沢市出身の詩人で小説家、室生犀星(1889〜1962年)が来年3月、没後50年を迎えるのにあわせて創設された。最終選考委員は、詩人で作家の辻井喬さんと小説家の加賀乙彦さん、犀星の孫で「室生犀星記念館」(金沢市)名誉館長の室生洲々子さん。

 同賞について、辻井さんは「我が国の近代文学のなかに確固とした地位を占め、強い影響力を与え続けている室生犀星の名を冠した文学賞が存在していなかったこと自体、不思議な現象であった」と感想を述べる。

 加賀さんは「詩人として優れた作品を多く書いた室生犀星は、散文の世界でも独創に富んだ小説や随筆を残した。彼の名を冠した文学賞が創設されたことはまことに喜ばしい」と語る。

 同文学賞の対象は未発表の短編小説か随筆で、受賞作1編に賞金50万円が贈られる。分量は400字詰め原稿用紙換算で50枚以内。小説のテーマは自由、随筆は「庭」。応募締め切りは今年11月末。応募先は〒933・8543 富山県高岡市下関町4の5 読売新聞北陸支社「室生犀星文学賞係」へ。

 来年3月26日の犀星の命日に、金沢市千日町の雨宝院で表彰式が行われる。

2011年7月8日 読売新聞)



室生犀星文学賞の創設について、最終選考委員に寄稿していただいた。

辻井喬さん
辻井喬さん

辻井喬さん

 室生犀星は生涯、詩と小説を並行して書き続けた。それはわが国では極めて珍しいケースなのだが、犀星の作品を読んでくると、それはごく自然な成り行きとして納得させられるのである。

 この詩と散文の関係は、ある意味でわが国の近、現代文学の個性、社会のなかにおける文学の位相を明らかにする事柄だけに、これを犀星の言葉で辿ってみたい。

 私と共に第二回室生犀星詩人賞を受けた富岡多恵子は、評伝『室生犀星』のなかの第三章「詩から小説へ」のなかで、「(前略)小説『あにいもうと』をきかっけにして小説家としての沈滞から脱して飛躍した、初期の濫作から十数年の長い沈滞期を過ごしてきていた。この十数年の間こそが、じつは犀星の小説家が詩人と闘っていた時期ではなかったのだろうか」と設問し、犀星自身の言葉として

 「或る時期の僕は小説が書けないでいると、詩ばかり書いてゐてそれで僕を建て直しをしようとしたり、詩がかけなくなると詩の悪口をいふやうな気持ちで、小説のなかにはいり込んで行って鬱憤をはらしたりしていたが、これは二つのうちの孰方かともわかれないでいると、その孰方をも完成することができないといふふうに考えることがあった。(中略)小説は直接に生計への重い役目をもっていたし、詩はなにやら小説とは少し清いやうなところがあったしー」と続くのである。

 ここで特徴的なことは、犀星が極めて自然な語り口で詩と小説を見比べていること、第二にどちらが上かとか本源的とかいうふうに考えていないことの二つである。わずかに、詩について「少し清いやうな」という感想を述べているが、これとて身分序列に触れたものではない。

 犀星にとっては詩と小説は同質の二つの文学の二つの現れ方だったように感じられて仕方がない。だから、彼にとっては詩から小説へ移る、また詩へ戻るということはさして問題ではなかったのではないか。

実はそんなところにも犀星文学の本質があるように私には思われるのだが、そのような大事な詩人作家の名を冠した賞が創設されたことはまことに喜ばしいと言う他はないのである。

加賀乙彦さん
加賀乙彦さん

加賀乙彦さん

 詩人として優れた作品を多く書いた室生犀星は、散文の世界でも独創に富んだ小説や随筆を残した。かつて加賀藩の一部であった富山県高岡市で今回、彼の名を冠した文学賞が創設されたことは、まことに喜ばしい。